2005年04月14日

イノセンス(2004年)押井守監督

inosense.jpg映画館で見た時には、あまりの映像美にあっけにとられました。DVDで再度観ると(16インチ)、さすがにそこまでの感動は得られないがやはりスゴイ映画です。文句無く最高点つけれる作品でしょう。よくぞ日本のアニメーションもここまでいった!というぐらいの出来です。レビューを見る限りでは、皆さんの評価は低いようですが…。

確かに日本人には、受け入れられ難い作品かも? 舞台設定としては近未来でSFのジャンルに入るのでしょうが、本質的には哲学的・宗教的な主題をもった作品ですね。パトレイバーの第一作で出ていた押井氏の問題意識をそのまま延長・発展させてものですね。

安易に謎解きめいて無意味な伏線を多様するGIANAXとは一線を画して、きちんと論理一貫した作りですね。挿入される聖書のフレーズとかも、ちゃんと意味があり、物語の世界観を重厚にしているので私的には大いに評価しているのですが、この点は見る人によってはもしかしてウザイかも?何を言ってるのか、ピンとこないと一層。その時点で残念ながらついて来れない人が多数出ている模様です。結果的に、見る人を選んでしまっているのかもしれません。残念な話。

でも、アメリカが先端をいっているサイバーパンクを突き抜けて、「これなら日本勝てる!」っていう気にさせてくれる世界観を構築してるのは掛け値無しに凄いと思います。受け線狙いもいいし、嫌いじゃないけど、「アニオタ」向けのエロ萌えばかりじゃ悲しいからなあ~。
電車男で騒いでもなあ・・・。(と、元2ちゃんねる徘徊者の独り言)

難点としては、前作の ghost in the shell観てないとこの世界観を理解するのが大変で辛いという事。この作品自体の表面的なストーリーはシンプルですが、その底辺に流れる主題はなかなか巨大で複雑な内容で、ほんの断片を示したっていうとこでしょうか。another storyが無限に作れそうな奥深さですね。そういう点も深読みしながら観ると更に楽しいかも?

そういう面だけでなく、単純にCGもこれはARTと十分に呼べる水準でしょう。デザインもなかなか個性的で壮麗且つ美麗だし、音楽も相変わらず独自路線を走ってますねぇ~。人間の心理描写も表現を抑えながらも、グっとくるほど深く描き切ってるし、余韻もあるし、大人が鑑賞するにふさわしい作品です。

もっとも銃撃シーンやいかにもSFといったシーンはきっちりどぎつく描いてるねぇ~。一つ間違うとやり過ぎとも言えそうなほどですが。とにかく完成度は高いです。お金かかってるだろうなあ~。こだわりが日本の職人の域ですね。うん。

でも…、どれほど一般に受け入れられるのか? 世間で話題になったけど、大衆は自分も含めて反応は一概に読めないですからね。興行的には成功したのだろうか???知り合いの反応では、イギリス人あたりが大喜びで繰り返し&繰り返し見て、熱くこの映画について語っていたそうですが、それは海外のオタクのような気もするんですが・・・。

でも、日本国内よりも海外で受ける作品なのは確か。リラダンの「未来のイブ」をさりげなく冒頭に置かれるだけで、おお~っと分かる人ならそれだけで惹き付けられるでしょう!間違いなく。私も勿論、読んだクチですのでやられたって思いました、実際。情報屋の屋敷に入り、ホールで示す文字。ゴーレムの伝説をさりげなく織り込ませる心憎さ。まさに本歌取りじゃないですが、日本人のお家芸のような巧みさ、うまさだもん。もっとも元ネタを知らない人には、何重にも構築された論理の面白さに気付かないかも?どうしても観て楽しめる人が限定されてしまうかな?もったいなあ~。でも、好きで分かる人には観て絶対に後悔しない作品。逆に言えば、絶対にハリウッドでは作れないし、マネできない作品。興行的には、難しいかな???

イノセンス スタンダード版(amazonリンク)
posted by alice-room at 22:18| 埼玉 ☁| Comment(10) | TrackBack(12) | 【映画・DVD】 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
Exxtendedと申します。TBとコメント、ありがとうございました。古い記事にTB頂けてほんとうに嬉しいです!イノセンスは劇場用アニメという形式をとっていますが、それ以上の何かを持っている作品だと思います。それだけにエンターテインメントとしては理解されにくい面もあると思いますが、このような作品が生まれてくる土壌があるのだから、まだまだ日本も捨てたものじゃないと思います。
Posted by Exxtended at 2005年04月17日 13:28
Exxtendedさん、こんばんは。評価は割れる作品ではありますが、イノセンスは世界における日本の映画水準を、ある意味、到達点を示した指標となりうるような作品だと感じています。
映像という点でも言うまでもないですが、それ以上に人をいかなる存在と捉えるか? 背景となる思想性が強く心に響きます。

本当にこういったものが作れる日本、捨てたもんじゃないですね。嬉しい限りです。
Posted by alice-room at 2005年04月17日 21:36
はじめまして、coyabuと申します。TBありがとうございました。イノセンスは3D-CGに絵画的表現を、アニメーションに映画的表現を取り入れ、新しいアニメーションの表現手法を示していると思います。前作の「Ghost in the shell」同様、数年してから再評価されるのではないでしょうか?
Posted by coyabu at 2005年04月17日 22:37
coyabuさん、こんにちは。そうですね、おっしゃる通り、もう少ししてから振り返って、再評価されるのかも知れませんね。
もっとたくさんの人に理解され、更に素晴らしい作品が作られていくことを願いたいですね。
コメント有り難うございました。
Posted by alice-room at 2005年04月18日 13:06
コメント&トラバありがとうございます★
お邪魔させてもらいます♪
「イノセンス」は興行的には成功したほいいがたいですが、
こういった作品が作られる国に生きているのはとても幸せなことだと思います。海外にこんな質の高いアニメーションないですからね。もっと評価されてもいいと思うんですけどね。
ではまたお邪魔しますね!kikiでした。
Posted by kiki at 2005年04月22日 22:21
kikiさん、こんばんは。今後もますますこういった水準の高いジャパニメーションが伸びていって欲しいですね、ホント。期待したいです。
コメント有り難うございました。

そうそうESもご覧になられてるんですね。見終わった後の感想はもう二度と見たくないと思いますが、それとは別に、あれを映画にするということで映画の幅を広げ、あそこまで映像化して表現する素晴らしさは正当に評価すべきだと思いました。改めてブログにも書きたいのですが…。

もし書けたら、TBさせて頂きますね。
Posted by alice-room at 2005年04月23日 00:29
alice-roomさん、こんばんは
イノセンスつながりで、TBさせていただきます。ただし、山田正紀によるノベライゼーションの方ですが。いつも、まともでないTBばかりで、申し訳ありませんが、よろしくお願いします。
いつか、まともに攻殻機動隊の記事を書いてみたいと思います。でも難しいですね。(苦笑)
Posted by lapis at 2005年09月22日 00:22
TB有り難うございます。早速、読ませて頂きますね。
Posted by alice-room at 2005年09月22日 01:17
alice-roomさん、こんばんは
攻殻&リラダン繋がりでTBさせていただきます。
タチコマに少し触れただけの記事ですが、よろしくお願いいたします。
まともな攻殻機動隊の記事いまだに書けません。(苦笑)
『攻殻機動隊 S.A.C. 2nd GIG 』の総集編のDVDが出ているようですが、思わず買いそうになりました。幸い何とかこらえることができましたが。(笑)
Posted by lapis at 2006年02月25日 01:07
愛くるしいタチコマですね、それは楽しそう。
>『攻殻機動隊 S.A.C. 2nd GIG 』の総集編の
>DVDが出ているようですが、思わず買いそ
>うになりました。幸い何とかこらえることが
>できましたが。(笑)
ははは、それ分かります。ふら、ふら~っとなりますね。TB有り難うございました。
Posted by alice-room at 2006年02月25日 23:51
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