
写本についての知識が欲しくて読んだ本。非常に興味深いところもあるが、退屈なところもあって興味のあるところだけ拾い読みをした感想です。
写本として現存しているものを紹介したり、そこに描かれているものの説明を主題にした本は多いですが、『写本』を生み出す行為やそれが持つ宗教的意義や経済的意義までを含んだ幅広い視野から研究の対象として採り上げたという点で非常に価値ある一冊。
写本がどれほど手間がかかり、同時に貴重な動産あり、その製作手法や製作過程、さらに流通過程まで含めた独自の視点がなんとも面白い!! また完全受注生産であった為に成果物の価値に比して制作費が妥当であり、中世を通じて非常な数量が作られていたことも初めて知りました。
また、amazonの書評でも指摘されていますが、印刷技術の長所はこれまで教科書では安価に本が作れることだと教わってきましたが、実はそれは必ずしも正確でなく、誤りのない正しい文章を供給できるようになった点こそがむしろ功績であったというのは、本当に驚きでした!!
他にも大変興味深い話が多いのですが、まあ退屈な点も実はあったりもする。あくまでも個人的な関心の度合いによって異なってくるのでしょう。値段からして妥当かな?って思う。写本のそういった面に関心がある人なら、買っておいて良い本ではないでしょうか?
【目次】中世ヨーロッパの書物―修道院出版の九〇〇年(amazonリンク)
はじめに
I 三つのルネサンス
II 写本の中世
III 教父時代の出版
IV 宣教師時代(初期修道院時代)の出版
V 修道士時代(後期修道院時代)の出版
VI 修道院出版への挑戦
VII 写本出版の研究
あとがき
主な参考文献
本書登場人物一覧
お値段もかなりのものなのだし。