しばらく放置していたのだけれど、部屋の掃除中に見つけたので改めて読んでみた。
読了にはあと少し残っているけど、最近時間がないので書けるうちに気付いた点を書いておく。
文章はうまくない。ダラダラと文章を連ねているばかりのうえ、参照元や比較する文献、作品への言及が言葉足らずのうえ、指摘自体もありふれており、どっかで聞いたような内容をただ適当に繋げているだけに感じてしまう。
マギを巡る時代的な変遷や解釈は、いくらでも既に出ており、その列挙で終わっている感がする。
著者がもう少し丁寧に、既存の解釈を説明したうえで自らの立場・主張をされているような部分があればいいのだけれど、ほとんど見当たらない。
単純に種々の解釈の紹介なら、それはそれでも良いと思うのですが、紹介にしてももうちょい時系列的な解釈の変遷が分かるように、うまく書けないものだろうか?本書の存在意義が分かりません。
参集する人々の人数や捧げ物、ヨセフの取り扱いの説明など、散々、あちこちの美術書で読んでますが、本書の説明はかなりお粗末です。マギの礼拝をテーマにしているが故に、残念感が半端無いです。
黄金伝説からの描写なども多々指摘されていますが、そもそもの民衆が黄金伝説に仮託したもの、誕生の背景とかも説明なしにあれこれ言われても、ちょっとねぇ~。著者の行う解釈・説明の説得力が本書全般を通して希薄過ぎて、素直に首肯できないのですよ。
つ~か、別に非論理的な説明をしたり、論外な説を押し付けるようなこともなく、淡々と説明するのですが、本当に大学でただ板書して自書を読み上げるだけの・・・そう、あの感じが本書の全てです。
実際、読んでいると非常に眠くなり、その意味での有用性も大学の講義並みですが・・・。
著者、一次資料を自ら当たって、実際の作品を観たうえで納得しているのですかねぇ~。どうにも二次資料でお茶を濁しているように思えてなりません。文章がシンプルというよりは、薄っぺらなのですよ。どうも。
ほとばしるパッションが見えない・・・。
もっとも読んでいて、当然、知らない事もあり、本書が全く役立たないわけではありません。本書で学んだこともあります。(後で別途、記述するつもり)
しかし、著者さん、そもそもの専門がルネサンス美術のようで、宗教画家に独自の才覚での発露を高く評価するような姿勢が文章のあちこちに滲み出ていて、個人的にはかなり嫌悪感があるのも事実。
ルネサンス期の美術表現とそれ以前の表現の比較がテーマなら、それもありですが、何故、その時代だけを特別視するのか?明らかに著者の個人的嗜好が偏見として出ているように思えてしまい、がっかりします。
元々、宗教画にその辺が出ているのをいささか浅ましく感じ、それをよしとしない今度は私の偏見なのですが、(それでいてラファエロの聖母子が大好きでわざわざ、こないだも見てきたばかりの矛盾の塊でもあるわけで・・・)とにかく、なんか本書を肯定するのは難しい心情ですね。
まあ、本書を出していた出版社も閉めたようで絶版なのかな?
需要無いだろうしね。
本書に独自の主張らしいものはありません。おそらく・・・・。
入門書としても偏ってるし、不親切だし、知らない人への紹介への意図も見えず、まして専門家がこんな説明を必要とする訳もなく、不思議ですね。ターゲットがどの層なんでしょう。
本書を読むなら、英語ですが "Revelation of the Magi" を読みましょう。はるかに面白いです。
改めて読み直して書評書こうかな? あちらの。
最近、読書スピードが落ちた上、読んだ本の書評を書く暇がなくて、何冊分の読了した本があっても全然書評書けてないなあ~。なんか悲しい。今週も残業ばっかりだし・・・・(涙)。
【目次】「マギの礼拝」図像研究―西洋美術のこころとかたち(amazonリンク)
Ⅰマギ物語のキリスト教における意義
1福音書におけるマギ物語の特異性
2古カトリック教義における「マギの礼拝」の意義
Ⅱ 「マギの礼拝」図像の構造
1キリスト教美術における「マギの礼拝」表現の重要性
2「マギの礼拝」図像の構成と教義
3ヨセフの取り扱い
Ⅲ 「マギの礼拝」図像の基本形態
1関連図像との関係
2聖母子表現
3<三王>表現と「マギの礼拝」図像
Ⅳ 「マギの礼拝」図像の様式展開
1様式展開の根拠
2図像の伝達と時代性
3<群>表現への発展
結語 カトリック芸術の精神史的意義
Revelation of the Magi: The Lost Tale of the Wise Men's Journey to Bethlehem(amazonリンク)
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