2006年12月23日

「バラの名前 百科」クラウス イッケルト,ウルズラ シック 而立書房

小説「薔薇の名前」オタクが微に入り、細に入り、小説全体に隠された入れ子状態のような隠し扉を探し出し、その扉から扉への繋がりを解明し、解きほぐしていく。ただ、それを隠したのが一流の学者であると同時に、それを探すオタクも一流の学者というのがポイント!

実際、え~そこまで知らないといけないのといささかうんざりするほどの重畳的な企みには驚愕を通り越して、正直とてもじゃないがついていけません。って泣き言を言いたくなるところもありますが、それでも本書を読むことで初めてあの本や映画で描かれている内容の真の意味を理解したような気になる箇所がいくつもありました。

逆に言うと今まで私の理解がいかに浅かったのかを痛感させられます。それに気付いただけでも本書を読んだ価値がありました。だって、あの本の中における修道院長のモデルがサン・ドニ修道院長のシュジェールだなんて、本書を読むまで全く夢にも思いませんでした。これ読まなければきっと死ぬまで気付かずにいたかもしれません。う~ん!!

ここんとかずっと読み漁っている資料がまさにそのシュジェール絡みだっただけに、そのことを知ったときには衝撃でした。小説「薔薇の名前」の該当部分とシュジェールの有名な言葉との一致には、ほんと目から鱗以外の何物でもないです。ちょっと手が震えちゃいましたもん。

いやあ~、他にも本当に驚くような発見が満載の本書です。小説や映画で感動し、真剣にもっと深く知りたい方には絶対にお奨めします!! でもね、ちょっと読んでみようかっていうレベルでは、読んでも無駄かもしれません。解説本ではあるものの、そこで要求される前提条件のハードルが高過ぎる。ホント、私なんか難しくて自分が可哀想になってしまうくらい。ある意味、あの小説よりも難解かもしれません。それだけに本書をうまく使いこなせれば、小説「薔薇の名前」を何倍にも奥深く味わい尽くすことができるようになれる(?)かも、しれません。

でも、腹をくくって読む気があるなら、きっとそれは役立つような気もします。私には、分からないなりにいくつか類書で思い当たる部分もたまにあり、非常に楽しくってしかたないところもありました。

そうそう、6章の「総まくり」というのがちょっとした関連用語集になっており、これは非常に重宝し、勉強になります。これもなかなかGOODです(満面の笑み)。
【目次】
1章 小説の構造
2章 舞台
3章 人物たち
4章 各種小説の合一―小説類型を求めて
5章 文学上の手本
6章 歴史的背景―総まくり(アルファベット順)

読者からの示唆

付録
 ウンベルト・エコ略歴―エコの邦訳文献
 映画『薔薇の名前』
 文献目録
 図版一覧表
「バラの名前」百科(amazonリンク)

関連ブログ
薔薇の名前(映画)
「薔薇の名前」解明シリーズ 而立書房 
ラベル:書評 中世
posted by alice-room at 00:16| 埼玉 ☁| Comment(2) | TrackBack(0) | 【書評 海外小説A】 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
ああ、そそられます!
実は最近ビデオで「ナインス・ゲート」を見直し、
本を読み直したら、最初に読んだときおりずーっと
わかったような気がしたんです。
ここを中心にあちらこちらお邪魔したのも理由の
一つかなぁ、と思ってます。
で、改めて「薔薇の名前」に挑戦してみよう
思っている今日この頃なのです。
Posted by OZ at 2006年12月25日 09:05
「ナインズ・ゲート」、あれもなかなか奥が深いですよね。元祖オタク的なマニア度がマネはできませんが、非常にそそります(ニコニコ)。

「薔薇の名前」更に&更に、大変ですよね。ただ、あの奥深さにはまた格別な魅力があるように思います。もっとも私は本では、一回読み通すので精一杯でした。映画は何度か見たけど・・・。この本を読んでまたあの映画を見たくなりました。本も読みたいんですが、ちょうどOZさんに教えて頂いたケン・フォレットの「大聖堂」の下巻を読んでいるところで時間的に他の本は辛いかな? でも、この「大聖堂」実に面白いですね。かなり悲惨なんですけど、実際もこんな感じではなかったのかと想像力を実に刺激されます。今年中に読破できそうです。ご紹介有り難うございました(お辞儀)。
Posted by alice-room at 2006年12月26日 20:18
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