
今年最後の読書であったのだが、期待外れもいいところで散々な子供騙しの小説の習作レベルであった。
この程度の本が、世界各国で翻訳されているというのは私の感覚では理解できないし、大層な宣伝コピーは私には完全な虚飾であったとしか思えない。私の主観では時間の無駄に分類する本だった。
ざっと粗筋を述べると、古代遺跡の発掘をボランティアでやっていた主人公の女性。いきなり勝手なところを掘っていて、突然驚くような遺跡を見つける。それから突如として巻き込まれる陰謀の数々。やがて明らかになる事実。それがはるか800年前の歴史上の出来事と関連していく。
舞台として大好きなシャルトルやカルカソンヌなどが出てくるのだが、その素材を全然生かしきれていない点がなんとも歯痒い。カタリ派やシャルトル大聖堂のラビリンスの理解も薄っぺら過ぎて、ストレスが溜まります。はっきり言うと、著者勉強不足。もっと&もっと勉強してから、書いたら?って言いたくなります。と同時に、あえてストーリー重視でそれらを抑制した書き方をしたのなら、なんでストーリーが面白くないのでしょう。
実際、本書の最初の4分の3は、断片的で全く意味不明な事件や行動が記されているだけで、解説を含めてそれらが有機的に意味を持ったものとなるのは、謎解きが始まる最後の4分の1に至ってから。正直上巻を読み終わっても無意味な文章だけで意味が分からず、くだらない文章だけだったのでよっぽど下巻を読むのをやめようかと思ったぐらい。個人的には、単純な小説としても二流以下に思えた。
更に聖杯伝説といいながら、こんなチンケな歴史ミステリーもないだろう?どこぞのTVの番組かい?と思うほどの安直な謎。本家の聖杯伝説の方がよっぽど面白い。歴史・ミステリー・小説のどの観点からもつまらなくて読むのが無駄だった本。ヒエログリフやアンク(本文中ではアンサタ十字と言っていたが、普通「アンク」のような気がするが・・・)を絡ませていても、全く意味がなくてただ使っているだけ、まるで子供の文章。こりゃ、大人の読み物ではありません。
別に突飛なストーリーでもいいし、論理的な謎解きでもいいけど、読んでいて面白くなければ意味ないっしょ! これで聖杯とか歴史ミステリーなんて言われたら、温厚な私も切れちゃいますってば、もう~。
カタリ派を扱った小説なら、私が否定的な感想を書いている「オクシタニア」の方が完成度としては、はるかに高いです。「ラビリンス」を読むなら絶対に「オクシタニア」を読みましょう。こちらは少なくとも歴史小説として一定水準以上は確実にクリアしています。それでも私には不満でしたが、本書の場合はそれ以前の問題です。
ちなみに・・・カルカソンヌの歴史自体の方が本書よりも何百倍も魅力的で興味深いです。世界遺産でもありますが、異端のカタリ派のことも含めてこんな幼稚な歴史小説もどきのとは隔絶した本物の歴史の宝庫です。是非、そちら関係の本を読みべきでしょう♪
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関連ブログ
「オクシタニア」佐藤賢一 集英社
「異端カタリ派」フェルナン・ニール 白水社
「異端審問」 講談社現代新書
シャルトル大聖堂 ~パリ(7月5日)~