2005年04月20日

「血塗られた法王一族」桐生操 福武文庫

表向き華やかなルネサンス期において、権謀術数の限りを尽くしてひたすら権力の拡大を目指す法王一族。精神世界のトップが同時に世俗における大領主でもある歪んだ時代に繰り広げられる陰謀・暗殺・戦争。オーソドックスながら、血族間のドロドロ具合はなかなか興味深い小説となっています。

ただ、どうしても政治的なものが関わってくると女性の描くものは淡白なんだよね(これは私の偏見かもしれませんが…)、まあ男性でもそういったものに興味の無い方もいるけど、概して男は政治的な生き物らしいです。この本でも勿論、当時の分裂していたイタリアを統一するという視点が明確に出せれているんですが、いかんせん、表現が甘い。田中角栄氏の元秘書である早川氏の描く生々しい政治の息遣いが聞こえてこない・・・そこだけは落第点。それ以外は、結構面白いのにね。

出てくる主役は聖職売買なんて当然ジャンってな人々の他、脇役を固める人達がちょっとイイかも? 君主論で有名な(これは読んでみると実感するけど、やはり名著!)マキャベリに、殺人事件の探偵役にダ・ヴィンチまで出させてなかなか豪華な顔ぶれです。確かにダ・ヴィンチは史実のうえでも軍事顧問とかいろいろやっていたけど、あまり必然性はないような?

でも、とりあえずは暇なら読んでもいいかも?改めていつの時代でも、どんな組織でも政治は勝つ事が大切で、目的により手段は正当化される、ということを思い出させてくれます。もっともこれ読むなら、君主論やカエサルのガリア戦記の方が、はるかに面白いけどね。私の場合。そういえば、マキャベリの食卓というイタメシ屋があったが、昔美味しかったんだけど、先日食べたら味が落ちてたなあ~、時の経過は悲しいものです。でも、そこの隣にできたロシア料理屋が安く美味しいから、いっか。世界はバランスが取れているものですね。

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posted by alice-room at 16:03| 埼玉 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | 【書評 小説A】 | 更新情報をチェックする
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