
文字も大きし、内容も読み易かったけど、何しろ分量が多い。結局、数時間かかってしまいましたが、まあそれなりに面白かったですね。一部は、気に入らない部分もあったんですけど、それはおいといて。
まず、舞台はロンドン。今でもオタクが集まるので有名なあの街(事実)がメインで、悪魔を操る魔術師が特権階級を作り、一般市民を支配する階級社会がある世界という設定。主役はいかにも子供向きで10代前半の少年魔術師。彼が使役する悪魔がバーティアスという名前の年齢5000歳の食えない奴で、実はこれが本当の主役だったりする。一応、形式的に悪魔は読み出された魔術師に逆らえないらしいのだが、この悪魔はひと癖もふた癖もあり、歳を経た狡猾さと達観による皮相的な毒舌を吐きまくるのがなかなか魅力的。作者のイギリス人らしさがおそらくこの毒舌に如実に現われている(ご存知の通り、イギリス人のあの皮肉好きは筋金入りだからなあ~)。
個人的には、かなり好きだが日本人には嫌われるんだよねぇ~。まあいいんですが。さて、粗筋は若くして政府の要職の一部を占めんとする少年魔術師に、次々と襲い掛かる仕事上の難問。治安担当者なので、不可解な事件が続発し、対処を迫られるといったところです。その事件には怪物ゴーレムが関わっており、謎を解く為、プラハへも行ったりします。
とまあ、話はその辺りにしといて。この本って本当になんの工夫も仕掛けもなく、安易に魔術関係の言葉をパクってます。だって、さきほどの少年の名前からしてマンドレークだもん。ご存知でしょう、魔法薬を作るときに欠かせない薬草の名前ですね。引っこ抜く時に叫び声をあげ、その声を聞くと死んでしまうというアレです。ゴーレムはそのまんまだし、ゴーレムの作成者がプラハにいるカフカですよ。確かにプラハの黄金小道には、カフカが住んでいた家があり、私もそこで絵葉書とかグッズ買った覚えがありますがそのまんまだもんなあ~。ゴーレムが土塊にかえったシナゴーグは未だにあるし、プラハじゃ。しかもしかも本の冒頭に出てくるプラハの場面ではストラホフ修道院まで出てる。ここのブログのモデルです(ブログの左に写真あるでしょ、修道院付属図書館の)。他にも無数に聞いたような名称が次々から出てくるしぃ。
それらは元ネタを知っているから、私的にはそれなりに面白いですが、知らなかったら何も意味無いと思うんですけど・・・? とりあえずは読み易いけど、敵側として出てくる少女が大嫌い!! 理屈はどうあれ、反社会的なテロリストを、やや偽善者的に正義の人っぽく描く著者に嫌悪感を覚えた。抑圧された弱者が、やむなく抵抗する手段とでも言いたげだけど、子供向きの本でこういう人物を出す気が知れない。個人的には、この手の悪は絶対的に悪で強圧的に弾圧するほうを支持するなあ~。何故か、この本はそういった大人向け以上に毒のある部分が多い。だから、それなりに売れているのだろうか?
そういった点が幾つか見られて、気に入らなかったが、全体として大人が読んでも楽しめる(屈折した)ファンタジーだと思った。それなりに誰が読んでも楽しめるんじゃない。でも、まあ、プラハの観光ガイドを見ながら作ったような話です。つっこみ方は、深みがないです。
さあ~て、前作も読もうかな? ちょっと悩むところ。気が向けば読んでもいいけど、あえて読んでも特になにもなさそう。今回も知っているところが出ているというミーハー的な意味で読んでたし。出てくる舞台次第かな? そんな程度の本作でした。
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