と、付帯条件はおいといて。だいぶ昔にも読んだことあるが、文章はうまいし、アイデアもなかなかのものだと思う。何よりも読者をひっぱる手腕には伊達に『売れっ子』ではないことが分かる。その一方で、この手の単行本の宿命なのだが、必要以上にエロが多い。あとがきを見ると、編集サイドから一冊につき何ページはエロと指定があるそうで、作家さんも本当に大変だと思う。
勿論、文脈上の必要があれば、少々過剰な演出もOKだし、喜ぶ場合もあるのだが、本書の場合、3冊分のエロ場面があり、正直言ってウザイし、その部分は飛ばしたくなる。辟易したのも事実だ。
でもでも、それらの欠点を補って余りある長所がある。
【以下、ネタバレ含む】
突如、高野山から空海が盗まれる、な~んてストーリー考えられないでしょう。普通。逆にそれらのアイデアを可能にするほどしっかり資料を集めて書かれているんですよねぇ~。他にも立川流や理趣教の話など、私も他の本を読んで知っていなかったら、びっくりするようなことが実にさりげなく本文に散りばめられています。本当に勉強になりますよ~(笑顔)。
更に人間の精神に潜り込むサイコダイバーなんてアイデア、私には思いもつきません。しかも人間の精神内の描写がなんとも微に入り、細に入りで素晴らしいものがあります。ゾクゾクしちゃいます。
最後の結論は置いといて。結構、面白いと思うんだけどなあ~。エロ場面を五分の一くらいに減らしてくれると私的には更にポイント上がりそう。基本的に夢枕氏の作品は好きなのですが、もし一度も読んだことがなければ、読んでみるのも良いかも? あっ、ちなみに良くも悪くも完全なエンターテイメント小説です。読書を楽しませることに徹底しておりますのでそこだけ理解しておけば、楽しい作品でした。
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