2013年01月15日

「ザ・ライト」マット バグリオ 小学館

therite.jpg

いい意味で裏切られました。
エクソシストを扱っていて映画になったのは知っていたので、「オーメン」や「エクソシスト」のような小説だと思っていましたが、本書、ドキュメンタリーなんですね。

いやあ~、エクソシストとしての経験など無い、本当に悪魔っているの?って霊の存在は信じていても、悪魔については半信半疑ないかにもアメリカの神父さんって感じの人が主人公。

急に、公式エクソシストになってくれって上司に言われて、バチカンの大学でエクソシスト講義に出るところから、本書はスタートしていきます。

悩み多き現代人である一人の神父の姿を通して、現代にも絶えることなく続く、悪魔の存在とその脅威について、日常の一場面として描かれます。

英語しか分からず、イタリア語で行われる講義の通訳探しに苦労しながらもその講義を受講し、さらには実際にエクソシストとして活動している人の下で、その活動に何度も参加して体験を積む過程もあまりにもさりげなく書かれているが故に、リアルっぽいです。

いわゆるエクソシスト物をイメージすると肩透かしを食うかもしれません。
その代わり、人の為に何かをしたいという、強烈な『奉仕』の想いを強く感じます。
と、同時に、びっくりするほど、純粋なキリスト教(特にカトリック)の勉強になります。

初期のキリスト教徒は全員にエクソシストの権能を認めていたとか、イエスを初め、使徒達もエクソシクトの能力をフルに活かして、神の力の強大さを見せつけ、布教を進めていたかとかね。

神学的な説明も大変詳しいし、ある神学的な説明についても保守派と革新派で説明が異なるなど、その食い違いもそのまま可能な限り、偏見を加えないようにして記述されていて、実に勉強になった。

物語としての面白さは、正直あまり無いと思う。
淡々とした、現代の日常が大半なので。

その代わり、エクソシストを扱った類書では見られないような関連知識が得られます。
結構、要求水準高いと思う。個人的には、こういうの好きで少しは予備知識もあるんですが、普通の人でついていけるのかね?その辺はちょっと疑問だったりする。

しかし、昔、このブログでもバチカンでエクソシストの講座が開かれるというニュースを取り上げたことがありましたが、まさかその内容がこうやって読めるとは・・・・。感慨無量。

オカルト系の薄っぺらな好奇心ではなく、もっと知的欲求から湧き上がる好奇心があるならば、本書はお薦めです。大いに、知的好奇心を満足させてくれるはず。とっても興味深く、勉強になりました。

悪魔払いする前に、事前に承諾書をとろうとする辺り、アメリカだねぇ~と強く思いました。おまけですけど。

ザ・ライト ─エクソシストの真実─ (小学館文庫)(amazonリンク)

ブログ内関連記事
「バチカン・エクソシスト」トレイシー・ウィルキンソン 文藝春秋
法王大学で開講したエクソシスト講座の詳細
悪魔祓いの全国集会をローマ法王が激励
エクソシスト養成講座 記事各種
エクソシスト ビギニング  レニー・ハーリン監督
エクソシズム(2003年)ウィリアム・A・ベイカー監督
エミリー・ローズ(2005)スコット・デリクソン監督
「現代カトリック事典」エンデルレ書店~メモ
ルーマニア正教会が見習い修道女虐待で司祭追放
posted by alice-room at 23:23| Comment(0) | TrackBack(0) | 【書評 宗教B】 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
コチラをクリックしてください

この記事へのトラックバック