
名前だけはずいぶん前から聞いたことがあり、あの有名なヴォイニッチ写本についての日本語サイトも何度か拝見していたのですが、本書を読むまで具体的にその内容をイメージできていませんでした。
本書は、ヴォイニッチ写本そのものへの考察というよりはそれに書かれた内容(暗号で書かれていると仮定して)を解読しようと人々が取り組んできた歴史やその手法の解説であり、直接写本自体を捉えるのとは視点を変えているが、本自体が解読できていないのだから、ある意味その周辺部から捉えようとする試みはなかなか興味深いです。
各種各様の解析手法を総括的に紹介しながら、それぞれの内容について周囲からどのように評価されているのかなどもできるだけ客観的な立場から説明しようとしていてその点も好感が持てます。
何よりも何故この本がそんなにも稀書としてもてはやされ、学識も地位も名誉もある人がなんとか解読しようと夢中になるのか、それが本書を読むことでなるほど!と思えてきます。確かに、はまってしまうと抜けられない魅力がありそうです。
写本がロジャー・ベイコンの手になるもの?とか、あのオカルトで有名なジョン・ディーが関わっているとか、まさに魔術的な魅力があり、それでいて何かしらの意味がありそうな奇怪な文字に、妙に関心を引く各種の図や挿絵などなど道具立てが揃い過ぎ(笑顔)。
写本自体が世に出るまでの不可思議で怪しい経緯やそれにまつわる人々の胡散臭さも加えて『偽書』疑惑が浮かんでは消えていく、その怪しさもまた謎が深まるばかりでいいんでしょうねぇ~。う~ん、まさに浪漫の世界です。
そうそう本書で二章にまたがって書かれている暗号論の話(「暗号の迷宮」の章)は、コンピュータ関連でしばしばお目にかかる暗号論の基本で他の本でも読んだけど、なかなか分かり易く書かれていました。こういう説明があるのはちょっと嬉しいかも?
勿論、本書を読んでもヴォイニッチ写本の暗号は解けませんし、それをテーマにしたものでもありませんが、少なくともヴォイニッチ写本がどういうものでどんな歴史があり、関心のある人々にとってどのように位置付けられてきたのかが分かるようになっています。
BBCでヴォイニッチ写本の番組制作に関わった人達による本ですから、その辺りの取り上げ方がうまいのは納得しますね。是非、BBCの番組見たいです!! これまでも興味のあった方、本書を入門書として読むといいと思いますよ~。

【目次】ヴォイニッチ写本の謎(amazonリンク)
1醜いアヒルの子
2ロジャー・ベーコンの暗号
3秘術師、透視家、エジプト学者
4暗号の迷宮 その1
5暗号の迷宮 その2
6天界の快楽の園
7聖別された意識
8偽作説今昔
9正体見たりシュレーディンガー
関連サイト
The Most Mysterious Manuscript in the World
日本で最も有名なヴォイニッチ写本のサイトです。
でも確かにものすごく惹かれるもののあまりに漠然としたものでもあるから、よほどの事がない限りのめりこむという所まで行きそうに無いようです。
日本語訳もあるんですね。
BBCの番組も見たいですね。
私もそこまではのめりこみませんが、気になる本ですね。是非BBCの番組見たいですねぇ~。