2005年04月28日

「エチオピア王国誌」アルヴァレス 岩波書店

神田の古書店で中をパラパラとめくっていたら、「プレステ・ジョアン(=プレスター・ジョン)」 なる単語がチラホラ!? どっかで聞いたような単語だなあ~と思って、表紙のタイトル見ると「エチオピア」の文字が。ようやく私の中でこれは読まなければならない本であることがピンときました!高いし、思いっきり分厚いんだけどね。

グラハム・ハンコックが「神の刻印」で触れていた「ケブラ・ナガスト(王たちの栄光)」の中の話で、シバの女王があのソロモン王と間に作った子供が王となったのが、現在のエチオピアと言われ、実際にエチオピアの人々が信じていること。まさにそれに関する話がところどころに出てきます。

また、本書の書かれた16世紀。テンプル騎士団が守っていたエルサレムが奪われ、聖地エルサレムを奪回すべく十字軍を繰り出すキリスト教各国の王達に広まった噂として、東方にあるキリスト教国の王プレスター・ジョンが援軍となり、苦境に陥った聖戦を勝利に導くという伝説がありました。実際に各国の王達が謎のキリスト教国を捜し求めて、世界中に使いを派遣していたのが当時の状況で。まさにこの旅行記を記したキリスト教神父アルヴァレスの事例であり、ここではエチオピア王をプレスター・ジョンと勝手に同一人物視しているのがポイント!(もっとも、それは実在しない伝説上の人物であったが、このエチオピア以外にも当時の新興国モンゴル帝国にまで至った神父もおり、歴史上には数々の冒険談が記録に残ってるみたい。下の関連ブログ参照のこと)

上記の事を前提知識として知ったうえで読むと、これはかなり面白い。先日読んだ小説「ソロモン王の洞窟」とは違い、なんせ史実ですから。本当に半端じゃなくて現実に苦労した冒険談であり、一緒に行った人間が何人も死んだり、モーロ人(イスラム教徒のこと)から石を投げつけられたり、熱病に冒されたり、凍えたり、泥棒に襲われたり、エチオピアで賓客扱いされたりと話題に事欠かない。もっとも史実故に、単調で興味の無いような事柄も延々と書き連ねてあるが、それが現実の旅なんでしょう。現地に行っても、散々焦らされて、なかなか国王に会ってもらえず、諦めかけたりね。帰国に際しては、なんだかんだと足を引っ張られ、季節風を利用した期間内ではないと駄目なのに、船に何度も乗り損ねたりとかなり悲惨です。

ソロモン王しかし、シバの女王とソロモン王(左のステンドグラスの絵)のロマンスや、国王以外の王族は謀反やクーデターを恐れて山に幽閉する話、女が戦死となって戦うアマゾネスの国の話、王国内ではが貨幣代わりで物々交換主流であり、定番の金がうなるほど豊富にある話とかは、興味をそそりますねぇ~。あと、エチオピア王への贈り物として、同時に使いの者達の旅費として胡椒が珍重され、用いられていたことなんかも興味深いです。胡椒一粒と金が同じ重さの価値があったというのが、まさに事実なんだなあ~っと実感できます。無味乾燥な歴史の教科書では感動も何もないんだけど、やっぱり体験談は違いますね!

楽しい箇所はたくさんあるんですが、いくつか抜き出すと

サラマン(ソロモン)がジェルザレン(エルサレム)において壮大にして豪華なる神殿に着手したことを聞いたサバ(シバ)の女王は、それを見に行こうと決心された。そこで女王は金を寄進しようと、数頭の駱駝に金をつまれた。ジェルザレンの近くまで来て、人々の使っている浮橋を通って湖を渡ろうとされたが、地上に降り立ち、橋げたを拝してこう言われた。「神よ、願わくは、世界の救い主が必ずはりつけにされることになるこの木に、わが足の触れざらんことを」と。そして湖を巡ってサラマン(ソロモン)に会いに行かれ、あの橋げたを取り除けて頂きたいと言われた。そして造営中の神殿のところへ行き、贈り物を寄進してからこう申された。「この建物は豪華さといい、美しさといい、私の聞いていたところとはだいぶ違っております。これほど美しく立派な建物はほかにありません。大きさもこれほどとは聞いておりませんでした。この気高さと美しさはどんな人も言葉に言い表す事はできますまい。持って参りました贈り物があまりに貧弱であったのが悔やまれます。これから自分の国へ戻り、この神殿の造営に必要な金を十二分に送り届けましょう。そうれから黒木(黒檀)も届けますから、装飾用におつかいください。」
ここで述べている橋げたは、かつて楽園にあった知恵の樹であり、後にイエスが架けられる十字架となる木であることが知られている(関連ブログ参照)。また、ソロモンが女王を計略によって一夜を共にし、子供が産まれたのがエチオピア国王であり、エルサレムから契約の櫃(アーク)を持ち出すことになるのも伝説に残されている(関連ブログ参照)。

アマゾネス王国では、女たちはパゴディニスと呼ばれ、大変強かった。性交を望むときは女王の許しを得て、特定の日数を決めて男を迎えた。その男性はその期間が終わるまで女性の家に滞在し、その後は自分の所へ戻った。許可なしに女性を訪れたり、期間内に立ち去ろうとした男性は殺された。妊娠すると女性は雌山羊・雌羊など雌の動物を飼い、男子が生まれるとその乳で育て、離乳期になると隣国へ連れて行って置き去りにした。アマゾナ(女性)たちは正直さを誇り、一度でも嘘をつくと、生きたまま火焙りの刑に処された。彼らは黒人から金を得、代わりに布を与えるという物々交換を行っていた。金はその国を流れる大河を通じて西アフリカから来た。コヴィリャンが語ったところによるとこの大河には男の人魚が住んでおり、かつて一人の人魚がプレステの宮廷に連れてこられたことがあり、使節団一行がエチオピアにいたときにも別の一人が連れたこられ、ポルトガル人たちもこれを見た、その人魚は話す事はできず、草を食べ、何も飲まず、粗い革のような皮膚に覆われ、人間より大きい手足をもち、毛髪は粗く短く、決して目蓋を閉ざすことのなに目は射るような光を放っていた。王はその人魚を川へ帰すよう命じた。
もっとも、著者のアルヴァレス神父自身は、これらの聞いた話の信憑性は疑っている。こういった旅行記の場合、実際に見聞した事実と伝聞により知り得た事が混同され、誇張されて書かれる場合が多いが、この著者の場合は可能な限り、事実は客観的に、伝聞は自ら知り得た知識を元に距離を置いて記述していて、すご~く信頼性があるように思った。勿論、情報が不十分な当時、著者のそうした態度にもかかわらず、今からみると誤解や誤りもあるようだが、それなりに重要な資料文献なのだろうと感じた。まっ、何よりも俗人の私が読んでも面白いしね(笑顔)。

そうそう、この本を読んで思った感想が、やはり昔の旅は命懸けってこと。誰も行ったことのない土地でしょ、マゼランがフィリピンの原住民に殺されたのもむベなるかな(納得!)。ピサロのインカ帝国征服やコロンブスの大陸発見もそうだけど、大物狙いの一発屋か、まさに神によるミッションで崇高な使命の元でなければ、怖くて行けませんね。私も食い詰めたら、黄金探しにアマゾンでも行こうか…?

それと、以前はかなり胡散臭く見てたハンコックの本も彼の仮説は、やはり眉唾であることには変わりませんが、事実は事実としてやっぱりよく調査してるんですね。ちょっと尊敬。もっとも彼が書いている内容のかなりの部分はこの本読めば、調査しなくても分かるんですが・・・(ヒドイ言い方)。

逆に岩波さんの凄さを感じますね。これだけのものを翻訳して出版する気概には頭が下がります。だって売れないでしょうに・・・。こんな本誰が買うんでしょう。一冊8千円近くだし、全巻揃えたら・・・。学者さんが科研費で買うか、図書館以外にはちょっと手が出ませんよ~。もっとも値段下げても買う人は限られてるし、難しいもんですね、価格設定。他のこの大航海時代叢書も読みたくなってきたけど、高いし、それ以上に頁数が多くて大変。全部で700頁超えてます。補注や解説が100ページそこに含まれているけど、読破するまでに何十時間かかったかな? 相当きつかった、ふう~。もっとも面白かったから読み通せたけどね。腹をくくらないと読めないですね、このシリーズ。誰か、出版社の人以外で全巻読破した人いるのかな?いたら、是非感想を聞きた~い。迷わず、師匠と呼んでしまうかも(笑)。

エチオピア王国誌(amazonリンク)

関連ブログ
「聖母マリア」 竹下節子著 講談社選書メチエ 覚書
「大モンゴル 幻の王 プレスター・ジョン 世界征服への道」 角川書店
「神の刻印」グラハム・ハンコック著 凱風社


posted by alice-room at 14:01| 埼玉 ☁| Comment(2) | TrackBack(1) | 【書評 歴史A】 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
alice-roomさん、TBありがとうございました。
ここにも、人魚があったのですね!以前拝見したのですが、プレスター・ジョンのイメージが強かったので覚えていませんでした。(苦笑)攻殻のような外部記憶が欲しいところです。(笑)
TB返しさせていただきますので、よろしくお願いいたします。
Posted by lapis at 2005年10月25日 20:28
いやあ~、書いた本人も忘れていました(オイオイ)。検索をかけたらたまたま引っ掛かったというのが実情です。
そのうちにIPODがそのまま、脳髄にプラグインして外部記憶になるのも時間の問題ですよ。お互いに希望を持ちましょう♪ もっともその時には検索の波にもまれてしまいそうですけどね・・・。全ての人類はgoogle検索の順位によって価値付けられかねませんが・・・。ちょっとSFモードです(笑)。
Posted by alice-room at 2005年10月26日 02:41
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