
一応、推理小説なんですが、既に謎解きは二次的な要素となり、探偵役の朱雀十五の活躍もさりげなく物語の解説役に出てくる程度です。
本作に至っては、江戸川乱歩や横溝正史の正当後継者と言ってよいのではないでしょうか? 藤木氏以外でいまどきこの手のタイプのおどろおどろしさを違和感無く描き切り、それでいて陳腐にならないまま、澱んだ怨念がまとわりつくような作品はないように思います。
日蓮宗の一派と自称して「死のう、死のう」と唱えつつ、集団自殺を行う怪しい宗教団体に、死んだはずの者達への思いに囚われてそれに引きずられてしまう人達。街中から浮浪少年が1人、また1人と消え、巷で囁かれる人肉ソーソジの噂などなど。
混沌としてなんとも危うげな世界観に、悲しいまでの人の心が描かれていて何故か惹き付けられてしまいます。推理小説としては、正直大した評価はされないかもしれませんが、普通の小説としては私こういうの好きなんですよ~。
浅草の衛生博覧会やサーカス、カフェタイガーってもうお好きな方にはそれらの名詞の羅列だけでそそるものがあります。私自身が怪しいものや珍奇なものが大好きで、サブカル系に妙なシンパシーを抱いてしまうタイプなんでどっぷり小説の世界に浸かっている感じです。
そういうノリを楽しめる方、固有名詞でその映像が頭に浮かぶ貴方(貴女)、お薦めです! いわゆる推理小説好きには、受けないだろうなあ~。
舞台には当然の如く、浅草なども出てきます。私も浅草には頻繁に出没しますが、神谷バーで飲んでいてもヤクザや芸人の方と知り合いになったくらいでとりたてて怪奇な事件に遭遇したことがありません。幸せなのか、不幸せなのか? まあ、実際に遭遇したら、洒落になりませんけどね。どうしても一寸法師とかが出てきそうな予感がして浅草に足を向けてしまいます・・・(苦笑)。
夢魔の棲まう処 朱雀十五シリーズ(amazonリンク)
関連ブログ
「大年神が彷徨う島 」藤木 稟 徳間書店
「陀吉尼の紡ぐ糸」藤木 稟 徳間書店
「ハーメルンに哭く笛」藤木 稟 徳間書店
「黄泉津比良坂、血祭りの館」藤木 稟 徳間書店
「黄泉津比良坂、暗夜行路」藤木稟 徳間書店