2007年01月26日

「コーデックス」レヴ グロスマン ソニーマガジンズ

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~本棚の『薔薇の名前』や『抱擁』の横に置くべき。~

とか大層な宣伝コピーがついていますが、それほどの奥深さは無い本です。でも、本好きには、結構ぐっとくる小説だと思います。その存在を疑われている幻のコーデックス(古写本)を巡る謎解きがなんとも楽しく、少しづつ解明されていく経過にも説得力があり、なんとも魅力的です。

粗筋は、投資銀行のエリート銀行員がたまたま関わってしまったコーデックス(古写本)探し。大金持ちの貴族からの依頼で訳も分からぬまま、ど素人の銀行員が膨大な書庫の整理をする羽目になる。その過程でとある稀稿本探しの不思議世界へと巻き込まれていく。

彼を助けてくれるのは中世史研究者の女性。熱狂的なまでに一途にその写本を探す姿勢が実にイイ。何よりも彼女の博識と情熱が、金銭以外への関心を示さなかった銀行員と対照的であり、いい味を出している。

また、古写本探しと同時進行で進められる不思議なPCゲームの存在が『古い世界』と『新しい世界』をパラレルで暗示し、奇妙に絡みあっていくのも面白い。

ただ本書の一番の魅力は著者がプロの書評家であることから、裏打ちされた書物に対する知識!! 本好きなら、きっとそそられること間違い無しです。本書とはノリが違うものの、「ナインズ・ゲート」的な世界観が漂います。

やっぱり、貴族や教会の所有する蔵書だよね。狙い目は! どんなお宝が眠っていることやら??? 一度でいいので、是非そういう書物に囲まれて時間を過ごしたいものです。羨ましい限り。

謎解き部分など、一番肝心な本に関わる部分は大いに楽しませてもらい、大変満足です(笑顔)。ただね、主人公たる銀行員と研究者の女性の間がね・・・最後だけ私にはあまり納得がいかないラストでした。でも、それは瑣末な部分かも? 総合的に見て本好きだったら、きっと楽しめる作品です。

コーデックス(amazonリンク)

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posted by alice-room at 22:28| 埼玉 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 【書評 海外小説A】 | 更新情報をチェックする
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