2007年01月27日

「イヴの七人の娘たち」ブライアン サイクス ヴィレッジブックス

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遺伝子を遡ることで人類(欧米人)の祖先が7人の女性に辿り着く。このインパクトのある内容で読まずとも名前だけは聞いたことがある本でした。また、更にはアフリカにいた1人の女性に辿り着くとも。

私の遺伝子に関する知識は高校生レベルで止まっていたので、ミトコンドリアのDNAが母系からしか受け継がれず、しかも親のものを100%引き継ぐと本書を読んで初めて知りました。そしてそれを遡ることで先祖の特定などに利用できるとは・・・。しかも突然変異の発現確率から進化時計としても利用可能だなんて、スゴイですよね。

そうそうミトコンドリアがもともと独立した生物で人類に寄生(共生)するようになったとか、その手の話も他の本で読んだことがあったがやっぱり本書でも触れられていて、ふむふむと確認してしまいました。

本書を読むことで最近の遺伝研究の一端なりを知ることができるように思います。と、同時にこのミトコンドリアDNAをツールとして使用することで次に次に明らかにされる人類の先人達の辿った道筋。いくつかの仮説が覆され、いくつかの仮説の有力な証拠となっていくその流れは、リアルタイムゆえのダイミックさがあり、学問の素晴らしさと人間のたくましさを感じさせてくれます。

そして本書の中でも絶えず出てきますが、著名な研究者であっても常に実績を示しつつ、いかに研究予算を獲得するのか?その点にいかに苦労しているのかが伺われます。日本で一番欠けている点とも言われますが、是非日本の研究者の方々にも頑張って頂きたいものです。ちょうど日経新聞の私の履歴書にノーベル賞を受賞された江崎氏のものが書かれていますが、あれと平行して読むと、より一層フェアな競争の素晴らしさと大変さを感じます。

いろんな意味で本書は大変興味深いと思います。自分の先祖は一体どんなルートで日本に渡り、連綿と生き延びてきたのか?実に&実に面白いです。生半可な家系図なんかより、魅力がいっぱいです。

でも、最後の方で7人に絞られた女性達の在りし日の姿を再現ドラマ風に描いているのは、非常に違和感を覚えます。ここまで非常に論理的に展開されてきたのに、読者の分かり易さを狙ったのか、突如、非論理的な空想場面が描かれるのは大いにマイナスです。友人で本書を読んだ人もこの部分については、本書を台無しにしていると言っていましたが、私もそれに近いものを感じました。

まあ、その部分を除けばとっても面白いし、クロマニヨン人とネアンデルタール人との関係など、知りたいことばかりです。雑誌の「ニュートン」でも読みたくなりますね(笑顔)。

イヴの七人の娘たち(amazonリンク)

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「ネアンデルタール」 ジョン・ダートン著 ソニー・マガジンズ
ラベル:書評 遺伝
posted by alice-room at 22:59| 埼玉 ☁| Comment(2) | TrackBack(0) | 【書評 未分類A】 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
こんにちは~。
こういう事実をわかりやすく書いた本は面白いですね。
ミトコンドリアが母に対して男の証明である遺伝子はY染色体です。
Yは男からしか受け継ぐことができませんよね。
この辺が天皇家が男系にこだわる理由の一つかと思います。
男であれば間違いなく天皇家の系譜の一人であることが明らかなんですね。
Posted by bonejive at 2007年01月28日 08:22
bonejiveさん、こんにちは。はい!この手の本は知らない知識も学べてとっても楽しいです♪

>Yは男からしか受け継ぐことができませんよね。
>この辺が天皇家が男系にこだわる理由の一つかと思います。
あっ、なるほど~。そう言われればそうですよね。女性を外部から迎えても男性の子供を天皇にしていく限りは、あくまでも天皇家として続いているといえますもんね。勿論、歴史的な制度としての意義が大きいのでしょうが、現代的にはそういう意義もあると言えますね。

実権がない故に、逆説的に歴史を生き延びてきた政治的・文化的・歴史的存在としての天皇制。いろいろと興味深いんですよねぇ~、ホントに。
Posted by alice-room at 2007年01月29日 18:37
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