第二部のサンチャゴ・デ・コンポステーラの巡礼に期待して購入したのですが読むべき内容がほとんどなく、大外れ! 期待が大きかっただけに、残念でした。
特に第一部については、正直どうでもいいかな~ってぐらいです。もっと面白くて為になる本がたくさんありますのでカタルーニャやガウディについては、他の本を読んだ方がいいでしょう。
また、肝心の第二部ですが、著者は車で見て回っていますがそりゃ駄目でしょう!って声を大にして言いたい。勿論、巡礼路を巡るだけではなく、その道沿いの辺鄙なロマネスク建築の建物も回りたいから、という意図は分かるんですが、巡礼の途上にある宗教建築物を真に理解するには、やっぱり徒歩で巡礼して欲しかった!!
まして専門家なんですし、本書は学術的な内容ではなく、エッセイもどきの紀行文のノリなんだから、そうでなければ、説得力のある文章にはなりえないでしょう。実際、著書の他の本と比べて、内容は二番煎じで使い回しだし、読んでいてもあまり勉強にならない。車で回っているんでは、紀行文としても論外でしょう。手を抜き過ぎではないかと?
おまけに致命的な欠陥がある。勿論、専門家として様々な建物についてそこそこの説明はしているものの、写真が最悪。モノクロは許せても小さいし、数が少なくて説明されても意味分からんて、もう~(若干、怒りモード)。
それでなくてもこの手の建築物は、実際に自分で見るしかないんですが、写真さえもないのでは解説自体が独り善がりの何物でもない。写真もなしに、本書の説明で理解できる人がいたら、その人はスゴイと思うなあ~。
これまでも非常に勉強させて頂いていただけに、本書は残念です。まあ、著書も数があれば、たまには外れもあるでしょう。あ~あ。
本書ではモサラベ美術についてもいろいろ解説されています。もったいないなあ~。別な本でもうちょっとなんとかしてくれれば、もっといい本で使える本になるのに。サンチャゴ巡礼とかについて知りたければ、芸術新潮で特集されたものをお薦めします。非常に美しく素晴らしい写真が豊富にあり、説明も簡にして要を得ています。本書も見習って欲しいもんです。
そうそう、そうは言っても本書で初めて知った言葉もあったのでメモ。
クリスム:読んでいて思ったのですが、これって仏教の仏足跡や法輪とかと同じ意味だよね。法輪もまさに円だし。
不可視的な神キリスト像を具体的な人間の姿で表現することをよしとせず、その代わりに抽象的・象徴的なもので表現しようとしたもの。八つに区切られた円で表現されたりする。
どの宗教も当初は偶像崇拝を禁止するのですが、やがて徐々にね・・・。まあ、人間ってどこまでも即物的だから目で見えないと駄目なんだろうなあ~。まあ、疑りぶかいトマスってことでしょうネ。
【目次】スペインの光と影―ロマネスク美術紀行(amazonリンク)
第1部 光と影の道カタルーニャ
カタルーニャの色彩
影に沈むモンカダ通り 若きピカソの街・バルセローナ
陽のあたる丘モンジュイク―ミロ美術館
ロマネスク美術の宝庫―カタルーニャ美術館
鬼才ガウディと聖地モンセラの山
異端の贈物―ベアトゥス本写本と天地創造のタピストリー
レコンキスタへの願い―ピレネーに眠るリポールの扉口彫刻
第2部 星の道 サンチャゴ巡礼
千年王国―サンチャゴ伝説と巡礼
ピレネーを越えて
王妃の橋
星隆る町
過酷な地
ブルゴスからレオンへ
レオン王国
星の輝く野―聖地サンチャゴ・デ・コンポステーラ
旅の終りに
関連ブログ
「シャルトル大聖堂」馬杉 宗夫 八坂書房
「ロマネスクの美術」馬杉 宗夫 八坂書房
「パリのノートル・ダム」馬杉 宗夫 八坂書房
「大聖堂のコスモロジー」馬杉宗夫 講談社
「黒い聖母と悪魔の謎」 馬杉宗夫 講談社
「中世の巡礼者たち」レーモン ウルセル みすず書房
「巡礼の道」渡邊昌美 中央公論新社
「星の巡礼」パウロ・コエーリョ 角川書店
「スペイン巡礼の道」小谷 明, 粟津 則雄 新潮社
「芸術新潮1996年10月号」生きている中世~スペイン巡礼の旅