2007年02月06日

NHKスペシャル「大化改新 隠された真相~飛鳥発掘調査報告~」

NHKスペシャル「大化改新 隠された真相~飛鳥発掘調査報告~」
【NHKの番組サイトより】
645年に起きた古代史最大の事件「大化改新」。『日本書紀』によれば、天皇を脅かす権勢を誇り、改革の障害となっていた蘇我入鹿に対する中大兄皇子や中臣鎌足のクーデターとされている。しかし、事件の舞台となった都・飛鳥(奈良県明日香村)で次々に発掘される遺跡は、史実とは異なる真相を物語りはじめた。
現在、昨年に引き続き、甘樫丘で蘇我入鹿の邸宅跡が発掘調査されているが、これまで発掘された蘇我一族の邸宅跡、飛鳥寺など関係する遺跡を総合すると、自らが盾となって都を要塞化し、あたかも王権を外敵から守ろうとしていた蘇我氏の側面が明らかになってきた。
その要が、飛鳥の入り口に位置し、都の外を一望できる甘樫丘だ。渡来系ともいわれ、大陸に情報ルートを持っていた入鹿は、巨大帝国・唐が倭国に侵略の矛先を向けていることをいち早く察知、脅威に備え飛鳥の防衛網構築に力を注いだ。その一方で、古代日本の海の玄関であった大阪・難波を整備し、東アジア諸国と協調路線の外交を繰り広げようとした。それなのに何故、入鹿は殺されなければならなかったのか?
さらにクーデターの後、中央集権的な律令国家を目指して行われたという大化改新の政治改革についても、『日本書紀』を古代中国語の音韻・語法から分析する最新の研究などから、その内容の信憑性に疑いが向けられ始めている。
一体、「大化改新」の真相はどこにあるのか?番組では、要塞都市としての飛鳥の全貌を浮き彫りにしながら、大化改新の隠された真相に迫る。
ホント歴史ってすごいですね。教科書で絶対に正しくて誤りがない(?)かのように教えていた事件の真実が180度反対の事実であったとは・・・。

蘇我一族が皇室をないがしろにして専横を図る一族ではなく、実は開明派であり、中国で勢力を伸ばしていた唐王朝と連絡をとりつつバランス感覚あふれる外交政策を進めようとしていた忠臣であり、大化の改新は逆に対外政策で強行一辺倒の保守反動派による政変だったんですね。

この番組では、数々の遺跡での発掘物や文献資料の新発見によって今までの『大化の改新』は、日本書紀において捏造された(=後世の為政者からの政策的意図に基づく編纂による)いたことを裏付け、『大化の改新』とは外交政策など国家運営に関する見解の相違とその見解を支持する派閥による権力闘争として生じたクーデターであったらしい。

この辺は、NHKの取材力の素晴らしさですよね!民放ではこんな番組作らないし、作れないもん(制作費がかかるわりに視聴率採れず、スポンサーつかなさそう)。いやあ、実に面白い番組です。

以前、大化の改新の殺害事件の舞台であった談山神社に行ったことがあるのですが、その時の私は朝敵の蘇我氏がここで殺されたと信じてたもんなあ~。この番組を見るまで、私はそう信じたまま死ぬとこでした(ちょっと感動!!)。

あと、再現された唐の軍船の巨大さも驚きました。長さ120mで3層構造に数々の武器の装備。実に進んだ海軍力持っていたんですね。(まあ、今も日本海に膨大な数の中国の潜水艦が活動してるそうですけどね。)日本軍が完敗したのも納得です。

「白村江の戦」以後、国内の海防強化に努めたのはつとに有名な話で私の昔の知識でも知っていましたが、その海防力強化を支える為の統治機構の整備(=中央集権の推進)が「大化の改新」以後の律令制の採用であったとは、これも全然知りませんでした。

でも、そういう対外的な脅威による必要があって、初めて国内改革が行われたというのは実に論理的であり、説得力があります。歴史のこういうのって大好きだったりします(満面の笑み)。

そうそう蘇我入鹿を祀った神社があるのには、ちょっと驚きました。いろいろと更に関心の幅が広がりそうです。

日本人が日本の歴史を学ぶうえで必要なことは、西暦(←既にナンセンス!)によるイベントの発生年ではなく、それが生じた歴史的社会的背景であり、それによって何が変わり、それ以降にどう影響を与えていくのか、まさに『政治』そのものだと思うんですよね。

人が生きていく=『歴史』且つ『政治』だと思うし、それ故に評価が時代毎に変遷していく。実に、実に面白いですね。

本当にこの番組は面白かったです。いやあ~こういう番組を作るNHKは尊敬しちゃうね。先日のgoogle革命のNHKスペシャルはたいしたことなかったけど。
posted by alice-room at 20:48| 埼玉 ☁| Comment(4) | TrackBack(0) | 【その他】 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
この番組、見逃しました。あるのは知っていたけど、仕事だった。
そう、こういう番組を作るからNHKは格が違うんですね。間違っても、やらせはしないし。

蘇我氏のことは興味あります。古代史大好き。
古代史を掘り返すと日本の歴史も随分と書き直されるでしょうね。
天皇陵とされる古墳も考古学的な調査をして保存に努めてもらいたいと切に願っています。
Posted by やいっち at 2007年02月11日 13:27
やいっちさん、今晩は。この番組を深夜の再放送枠で見てから、図書館で関連本を調べてみましたが、やっぱり最近ではNHKでやっていたような説明が主流になっているようです。

wikipediaでも書かれていました。ご参考までに。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A7%E5%8C%96%E3%81%AE%E6%94%B9%E6%96%B0

あと今日のニュースでもやっていた以下の記事ですが、まさに入鹿の屋敷跡で番組ではこれも採り上げていました。
http://www.chugoku-np.co.jp/NewsPack/CN2007021101000215_National.html
Posted by alice-room at 2007年02月11日 22:20
NHKのスペシャル番組「大化改新・隠された真相」に対する評価は、
だいぶ異なります。興味があるなら、下記にアクセスしてみてください。
http://www.bell.jp/pancho/kasihara_diary/2007_02_12.htm
Posted by ドン・パンチョ at 2007年02月15日 13:50
ドン・パンチョさん、初めまして。コメント有り難うございます。サイト拝見しました。大変勉強になりました。
そういえば、他の方のブログでもあのNHKスペシャルには問題があると書かれている方がいますね。私はあの番組を見てから、何冊かの歴史の本で乙巳の変に関する記述を調べてみましたが、大化の改新の記述それ自体はやはりそのまま受け入れられるものではなく、再評価の動きがあり、蘇我一族についての評価についても単純な専横していた朝敵というのは、やはり行き過ぎだというような記述をしばしばみました。

従来の私が教科書で習った単純な見方は、見直しを迫られているのかなあ~と思いましたが、NHKの番組内での採り上げ方のような断定的な書き方をしている本は確かにありませんでした。また、番組内で根拠に挙がっている話も一部以外は出てきませんでした。(勿論、本によって異なるのは当然ですけど)

NHKスペシャルだからと言って安易にうのみにしてはいけないですね。私は安易にTVを見ただけでびっくりして感動しちゃいましたけど。おっしゃる通り、今後も注意してニュースなども見ていきたいと思います。でも、実際のところ、どの説が主流なのか知りたいですね。NHKのものもある程度は、支持されている説だと感じましたが? 本で読んだだけではイマイチ不明でした。
Posted by alice-room at 2007年02月15日 21:05
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