
さて、いまや古典としての観さえあった最初の「エクソシスト」とは、ずいぶんと感じが違っています。正直怖いって感じじゃないんですが、逆に知的好奇心を大いに刺激されたりするんですが・・・。これって少数派っぽいですね。見終わってから、他の方のレビューを見ると、酷評されているのが多かったし・・・。
でもね、ここで描かれるテーマってすごく興味深いです。たぶん…あまり背景的な事を知らない人が多いんじゃないかなあ~って思いました。アフリカにおける「善」なる人、なんて先日私が読んで感銘を受けた「エチオピア王国誌」にそのまんま出ている史実とぴったり重なります。既に5世紀辺りからキリスト教を受容し、16世紀頃の大航海時代にそこを訪れた神父の旅行記には、あちこちに築かれた修道院や教会の様子が克明に描かれています。
また、この映画のキーにもなるイナゴ(バッタ)の襲来も、記録を残した神父も経験し、当時甚大なる被害をもたらし、それを防ぐためのキリスト教の祈祷も行われていたことが史実として知られています。そういったキリスト教を巡る歴史的な事実が背景にあるので、唐突にアフリカが描かれているのではないのですが、日本人(私も含めて)には奇異に感じてしまうのではないでしょうか?
また、悪魔をあくまでも妄想、と位置づけた科学の一員を自認する医師と悪魔が実在の存在としたうえで対処を目指す神父との対立。少女を救おうとしながらも理解できない人達という描き方もいかにも教条主義的で面白いです(見ていると腹立たしいけどね)。また、教会内部でも悪魔の存在を認めつつもそれに対する対処は、行き過ぎると異端になるというのもまさに、現実的ですね。先日も、進歩的な神学論を展開したカトリック神父が教理聖省から、教義から逸脱しているとして警告その他諸々の処分を受けたのも生々しいです。
あっ、あと暗示をかけていく催眠療法が描かれていますが、時代を感じさせますねぇ~。当時の雰囲気を色濃く出しています。もっとも映画公開当時は、むしろ先端心理療法だったのかな? 60~70年代にかけての映画にはよく出てきますが、個人的には嫌いじゃないです。
登場人物の服装とか、どうしても時代を感じさせますが、映画の内容自体は全然新しくて新鮮さを覚えました。ホラーではないけど、これは見ておいていいと思うんですけどね。エンターテイメントとしてのホラーを求める方には向いてません!
だけど、しっかりした根拠に基づいてしっかり作られた作品だと思いますよ。前作ヒットして儲かったから、それなりに金も賭けてると思うんだけど・・・。余談ですが、アフリカの場面で思わず、ライオン・キングを彷彿としてしまったんですが・・・変かな? あとイナゴで食い荒らされる場面では、エチオピア王国誌の他に、”出エジプト”の前にイナゴの大群で王に警告していたでしょ(旧約)、あれもなんかオーバーラップしたんだけど、それは行き過ぎかな? なんか象徴的で意味ありげ、なんですけどね。
ごく一部の人にだけ、お薦めの映画でした。変な人はどうぞ!!(私のような)
最後に粗筋を少々。
前作で悪魔払いをしてもらった結果、普通に戻ったような少女。その際の記憶も失ったように見えたが、実は・・・。聖なる存在であり、特殊な力を持つ者を悪魔はしつように狙い、少女もまだその影響下にあった。悪魔との戦いで亡くなった神父の意思を継ぎ、悪魔と対決する神父。彼は、悪魔に屈しない為の方法を求めて、亡くなった神父がアフリカで悪魔から救った少年を訪れる。そして・・・。
エクソシスト2(amazonリンク)
オーメンとかその手の映画は、ねた基はこの辺にありますね。
関心ががぜん湧いたのでネットで他にも情報探してみま~す。
この映画はスティーブンス・キングも酷評してましたが、僕は個人的に好きです。ジョン・ブアマンの映画では「エクスカリバー」もお奨めです。