
私が渋澤氏の小説で慣れ親しみ、洋書で「mandrake(和名 マンドラゴラ)」というタイトルの本まで持っているくらい好き。名著「毒薬の手帳」でも頻繁に出てくるこのマンドラゴラやカンタリス(はんみょうの毒)、日本でも殺人事件で知名度上げたトリカブトとか定番の毒薬がいろいろと出てきます。あっ、今でもそうですが、毒と薬は紙一重。量や用法次第で鬱を直す向精神薬や性的不能に効く媚薬・精力剤が、あっというまにオーバードーズになってしまい、あの世逝きというのは今も昔も変わりません。市販の薬でさえ、それは変わりません。
私の場合、幸いなことに使用したことはありませんが、都内ではついこないだまでマジック・マッシュルームを夕方7時ぐらいに渋谷の路上で売っているのには驚きました(大通りなのに)。今は違法になったみたいですが…。
もっともこの本でも述べられていますが、媚薬の使用はそれほど奇異な例ではなく、各種宗教にはある意味つきものでもありますしね。実際、以前読んだ本では、初期キリスト教はある種の幻覚キノコの見せる奇跡によるものだという、とんでもない説が紹介されていましたし、明確な話としては旧約聖書にマンドラゴラを飲んで不妊のラケルを懐妊させる話も紹介されています。あとイスラムのスーフィズムとか、中国の金瓶梅とかで媚薬や精力剤を使って酒池肉林に励む主人公もありがちな話でした。シェークスピアにも魔女が頻繁に媚薬を作っている場面が出てきますしね。お馴染みです。
そういったところで使われる植物や薬の名称、素材や作り方、効能等を博物的に集め、紹介してくれます。また、いろんな本でそれについて触れている文章を引用しながらなので、当時それがどんなふうに扱われていたのかも分かり、たくさんの知識が身に付きます(生きていくうえで役に立つとは思いませんが…)。私的にはこういうのってスキ!なんですよねぇ~。もう、無駄以上の何物でもありませんが(ってオイオイ)。
アルカイド系の成分を含んだナス科の植物がどうたらこうたら…、チョウセンアサガオの成分がとかね。今ふうの単なる合成麻薬とかだったら興味はありませんが、植物や動物、女性の月経血とかを材料にして作る媚薬って面白そう。また、それを用いるのが未開(語弊がありますが)の民族だったら、それは神聖な成人の証かもしれませんし、中世の王侯貴族なら、選ばれし者のみの特権だったのかもしれません。インドだったら、神の飲み物ソーマとか、ギリシアならネクタル等々。う~ん、そういうのを知るのって密やかな楽しみって感じですね。
資料的には、持っておいて悪くはない一冊。これの他だと「媚薬の博物誌」とかもいいね。あと何冊か、この関係の書籍持ってますが、まずまず合格水準だと思います。ちょっと俗っぽい「危ない薬」とかあの手の本よりは、ずっといいです。あれも持ってるけど…。
目次見ただけで、好きな人ははっきりしますね。サティリコンに錬金術だもん(笑)。まさにツボかな?
【目次】
序章 文化とエロス
第1章 ポン・シャンカール
第2章 サテュリオン
第3章 錬金術と魔女
第4章 アフリカの幻想
第5章 新世界の媚薬
第6章 永遠の「サマー・オブ・ラブ」
終章 聖なるものと俗なるもの
媚薬―エクスタシーと快楽のドラッグ(amazonリンク)
これもなかなか良い、特殊分野の植物レキシコンで気にいっています。朝顔やペチュニアなどという今では園芸植物でも、なかなかつわものなのだという事を知ってみると、庭の植物を見る目が変わったのですが。。。面白い本の紹介楽しみにしています。
でも、ドイツ語は読めないんですよ~(涙)。学生時代の不勉強が…。フランス語も辞書ひきひきでも苦しいし(自爆)。
そうそう、日本だと大学付属の植物園が面白いですよ~。日光の東大付属植物園とかも散策向き(大正天皇の別荘見学の際に寄ったりします)。
他にも全国に散在していますが、旧帝大系付属の植物園とかも旅行してて行ってみると、なかなか興味深い植物がたくさんありますね。何よりも人がいなくて思索向き。いっつも本を片手にあちこちうろついていたりします。
コメント有り難うございました。
ご紹介いただいた『媚薬』、目次を見ると面白そうですね。題名を見ただけでパスしていたのですが、ブックオフあたりで見かけたら買うことにします。(笑)
ところで、上の「666は獣の数字に非ず 」は面白いですね。でも「616」だと何か間が抜けた感じがします。「666」のほうが象徴的です。まあ誤解や間違いが正当なものとして定着するなどと言うことは良くありますが。
でも面白いですよ。
616はちょっとねぇ~。もしかしたら、解読のミスか、写本記述者のミスかもしれませんし…(いささか牽強付会ですね、苦笑)。でも、やはり私も666の方がそれらしく感じます。