2007年02月07日

「ゴシック(上)」アンリ・フォシヨン 鹿島出版会

中世美術の碩学アンリ・フォションによるゴシックの本です。非常に有名な本ですが、私にはほとんど理解できませんでした。なんとか読破したものの、説明されている文章内の単語で分からないものが頻出するうえに、章の区切りはあるものの、節らしいものに分けられていても節のタイトルがなく、何について書かれているのか非常に理解しづらい。

実際に文章を読んでみても個々の説明以上に、どういった論旨で何を説明しているのか全体像がつかめないので個別の説明に振り回されてしまい、私には大いに欲求不満を感じた。

勿論、私自身の知識不足にもその原因はあると思う。ただ、それだけではないようにも感じる。翻訳者は何故か仏文学専門の先生達だが、美術史や建築の専門ではないようだ。失礼ながら、翻訳者ご本人がよく分からないままに文字だけを訳しているよう可能性があるのかもしれない。

少なくとも今までこの分野の本を何冊か読んできてこれほど理解できないのは初めてだった。勿論、原本自体が難解な可能性もあるのだが、とにかく私には読んでも何も得られない本だった。期待が大きかっただけに非常に残念である。

他の人の感想も是非、聞きたいところである。ちなみに書評で有名な松岡正剛氏の千夜千冊というサイトでも本書が取り上げられている。たまに興味深い書評が書かれていることもあるのだが、本書に関する限り、そこの書評を読んでも納得できない。

確かに本書では、他の書物ではほとんど採り上げないオジーブについて多くの紙面が割かれているが、それがゴシックの本質だろうか? 素人の私なりに疑問を感じる? 私が本で理解した範囲の知識ではむしろサン=ドニで体現された光の形而上学の思想こそが本質的なものに思えるのだが・・・。

逆にその点にほとんど触れられていないのも、時代のせいなのか分からないが、本書が偏っているようにも感じられる。もっといろいろな本を読んだうえで比較しないといけないのかもしれません。手元にまだ何冊かゴシック関係の本があるので、おいおい読んで勉強していくことにしましょうか。

本書を読んで自らに課題を残すことになりました。
(実は下巻も買ってあるのだが、フランス以外のゴシックについての話だし、意味分からなそうだから、しばらく積読にしておこうと思う)

ゴシック 上(amazonリンク)
【目次】
第一章 初期ゴシック芸術

 1オジーブ芸術の誕生、多様にわたる諸実験、イル=ド=フランス地方のロマネスク芸術として出現したゴシック建築、オジーブについてその機能の問題と論争、オジーブ構造体系の発達、飛びアーチの原初的形体

 2サン=ドニ修道院付属教会堂とシュジェ、トリビューンつき大型教会堂と身廊立面の四層構成、円形袖廊の教会堂群ーノワイヨンの大聖堂・ソワッソンの大聖堂、ランの大聖堂の将来、パリのノートル=ダム大聖堂、身廊立面の三層構成ーサンスの大聖堂

 3シトー派芸術、ブルゴーニュ地方における発祥と地方色、聖ベルナール、シトー派芸術のロマネスク時代ーフォントネー修道院付属教会堂、ゴシック時代ーポンチニー修道院付属教会堂、派生的変種、ラングドック地方の教会堂群、ヨーロッパ全土へのオジーブの伝播

 4ゴシック彫刻の出現、黙示録に基づく図像体系の枯渇、タンパンに嵌め込まれた聖母像型聖遺物匣、先触れびとたちのテーマの発案、その様式ー人像円柱、ロマネスク彫刻の最終段階、様式技法の忘却、新しい探求

第二章 古典時代

 1初期ゴシック芸術の偉大さと生命力、古典時代、フランスの偉大な大聖堂群、三層構成形式の流行、シャルトルの大聖堂とそのグループーランス・アミアン、この形式と多層式内部立面構成の組合せ、ブールジュの大聖堂とそのグループーマン・クータンス、ブールジュとパリの両大聖堂の差異

 2レイヨナン芸術派革新ではなく洗練化である、壁体廃除、縦目石、パリのサント=シャペル、十二世紀の教会堂の改修、バラ窓

 3多様化と相互影響、ノルマンディー地方におけるフランス芸術、ブルゴ-ニュ地方におけるラン地方・ソワッソン地方の芸術、ラングドック地方におけるフランス芸術、独創的な諸形体ーアルビの大聖堂、輸入されたものージャン・デシャンが築いた教会堂、地中海沿岸地方のゴシック、イタリア、二つのスペインーゴシック的スペインとムデハル的スペイン

 4イングランドの建築、その進展の独立性、初期イングランド様式、曲線様式、南部ネーデルラント、レイヨナン芸術の流行、ドイツにおけるロマネスク的ゴシック

第三章 モニュメンタルな彫刻とゴシックの人間主義

 1宗教的感情の三段階、十三世紀の図像体系、福音書のキリスト、聖母の戴冠、若々しさ、世界の絵巻と百科全書的精神、さまざまなる「鑑」、ヘレニズムの人間主義、ゴシックの人間主義、仏教の人間主義

 2様式、建築と彫刻との新しい繋がり、枠組みー柱頭・ヴッシュール・タンパン・側柱、モニュメンタルな様式、プロポーションと処理技法における遠近法、壁面風の肉付け

 3各地の工房と様式進化、初期、十三世紀前半におけるフランスの大聖堂の工房、ゴシック彫刻のプラクシテレス的時代、パリの芸術と都会的洗練味、枠組みと型式の進化、十四世紀の聖母像、貴材芸術、墳墓用肖像、フランスにおける伝播、ローヌ河流域の南仏とトゥールーズ地域の南仏、フランドル問題

 4イタリアのゴシック、帝政期ローマへの妄執とトスカナ地方の典雅趣味、スペインーロマネスク的伝統の生命力、フランスの影響、ドイツ・サクソニア流派、バンベルク、ナウムブルク、イングランド彫刻の独創性、モニュメンタルな枠組み、ひょろ長い形体、アラバスター彫刻

第四章 十三、十四世紀のゴシック絵画

 1中世の二種類の絵画、光の模倣、遮られた光、フランスの焼絵ガラス、その起源と初期の工房、サン=ドニ修道院、フランス及びイギリスにおけるシャルトルの影響、パリの焼絵ガラス職人、サント=シャペル、バラ窓、十四世紀、グリザイユ、技術上の革新、様式の進化

 2イタリアのモニュメンタルな絵画の偉大さ、ダンテの築いた大伽藍、ジオット以前の絵画、トスカナ地方のビザンチン芸術ーチマブーエ、ローマの教皇庁芸術ーカヴァルリーニ、シリアの修道僧の逃避から初期フランチェスコ派の聖画像に至る民衆的芸術、ジオットと聖フランチェスコ、、ジオットの芸術がフランチェスコ会の思想に形を与える、ジオットとジオット派、シエナ派、トスカナ地方の絵画の東方趣味、ボヘミア・カトロニア・アヴィニヨンにおけるシエナ派絵画の伝播

 3フランスの絵画、新しい枠組みと焼絵ガラスの影響を受けて進化した壁画、世俗的主題の絵画におけるモニュメンタルな様式、絵画の間戦士達、祈祷所の絵、フランスの細密画、ウィンチェスターとヴィラール・ド・オンヌクールの規範、十三世紀の建築における枠組み、十四世紀最初の三分の二世紀、ジャン・ピュセル、単彩画、版画の発明、空間の構造に関する十四世紀待つの偉大な探求、ジャックマール・ド・エダン、ジャック・コエーヌ、ランブール兄弟
関連ブログ
「SD4」1965年4月 特集フランスのゴシック芸術 鹿島研究所出版会
「図説世界建築史(8)ゴシック建築」ルイ・グロデッキ 本の友社
「大系世界の美術12 ゴシック美術」学研
「大聖堂のコスモロジー」馬杉宗夫 講談社
「ゴシックとは何か」酒井健 著 講談社現代新書
「ヨーロッパのキリスト教美術―12世紀から18世紀まで(上)」エミール・マール 岩波書店
「ゴシックということ」前川 道郎 学芸出版社
ゴシックということ~資料メモ
「中世思想原典集成 (3) 」上智大学中世思想研究所 平凡社
「カテドラルを建てた人びと」ジャン・ジェンペル 鹿島出版会
「フランス ゴシックを仰ぐ旅」都築響一、木俣元一著 新潮社
「大聖堂の秘密」フルカネリ 国書刊行会


posted by alice-room at 21:16| 埼玉 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 【書評 建築】 | 更新情報をチェックする
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