内容は障害のある人の『性』に関するもので、障害が原因で社会生活上の不都合がある際に、性的な援助をすることについてをテーマにしている。
人間である以上、不可避的な問題であるが、非常に生々しい問題であり、実際に社会通念上の倫理や公衆道徳上との兼ね合いがあるうえに、また日本という社会がそれを禁忌としてきた文化があるのでより一層困難な現況が紹介されている。
本書では、決してその問題に対して積極的に何かを主張したり、著者自らもほとんど動こうとはしないが、それを非難するのは無理があるだろう。著者はあくまでもライターとして書いているだけであり、あくまでも仕事の一環であることを読めばいい本だと思う。
逆に、現状を認識できないエセ進歩主義者や解放された性意識の主張者ではないので、こういったことがあるんですよ~的な問題提起として、きっかけになるだけでも価値があるかもしれない。
ただ、これを読んで思ったのは人が生きていくのは、『パンのみにあらず』性欲も含めて、生きている実感としての充足感を感じられないといけないんだなあ~と思いました。性欲は本能であると共に、いわゆる自己実現欲求の一つの現れでもあるかもしれません。
人間なら誰しも持つ『業』のようなものを感じさせずにはいられない本です。もっとも人は生きている限り、悩み続ける存在であり、精神のバランスをとることだけがそれに対処できるのかもしれませんが。
また、本書ではオランダでの進んだ(?)実例の紹介もありますが、根本的に有効な方法ではないようです。人がすることである以上、ボランティアを受ける人とする人の気持ちも複雑で何かしら別な問題も生じかねない恐れもあるようです。実に難しい話。
もっともより現実的に考えるなら、表向きは非合法でも金銭である程度は片がつく問題ではある。状況が状況だけに、関係者もグレーな対応というか、場合によっては見て見ぬふりをするのもそれが一番良い場合も考えられる。綺麗事では済まない問題だけに、できるだけ現実的に対応することが必要に感じたりもした。
障害者に固有の問題ではなく、いろいろと気付かされることがある本だった。でも、正直言うと、あまり好きではない。この手の本は。どうしても売文の匂いがしてしまうのは、私の穿った見方のせいか?
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