2007年02月26日

「新本格魔法少女りすか」西尾維新 講談社

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いつもお世話になっているlapisさんのブログを拝見して著者の名前だけは知っており、だいぶ気になっていて読んだ本です。図書館で見つけたのですが、表紙とタイトルで借りるか否か、だいぶ躊躇してしまいました(笑)。

おまけに裏表紙の内容紹介がめちゃくちゃ無意味でポイントがずれていて、本書の適切な紹介とは言い難かったのも一因! 出版社さんにもう少しセンスのあるコピーを書ける人を切に望む!!

タイトル通り、確かに魔法少女が出てくるのだが、『新本格』の意味が分からん? 『ドクラマグラ』が出版されたときに、変格探偵小説と書かれていたのと同じくらい不可解だ。

とまあ、不平不満はあるものの本書の内容自体は、大変素晴らしい。というか、久々にこりゃスゴイ!!って思った。

10歳の魔法少女りすかと彼女の特殊性を自らの為に利用したいと考えるいかにも現代的でシンプルな(+感情欠落的な)思考を持つ一般ピープルの少年がメイン。二人が協力して、りすかの父で偉大なる大魔法使いを探す為、数々の常識的には不可解な事件(=魔法が絡んだ事件)を解決していく。

まあ、舞台はどうってことない魔女っ子メグちゃん(ふっる~)レベルのものなのですが、具体的な個々の『魔法(本書では魔法式と魔方陣として区別されている)』の設定が実に緻密なのには驚嘆を禁じえない。

魔法に『属性(パターン)』や『種類(カテゴリ)』というのがあるのは、RPGでおなじみだが、その定義の仕方の厳格さとそれらを含めて整合性を取りつつ、独自の秩序の中で『魔法』というものを整然と位置づけるその論理性には、ある種、別格の感動を覚える。

個人的には、神学論などで展開される合理性と共通のものさえ感じる。よく論理破綻しないで最後までこの架空の論理を展開していけたものだなあ~(拍手)。それだけでも読む価値があると思う。

但し、普通に「魔法少女」という言葉からイメージする甘ったるいファンタジーなど期待していると、思いっきりテンプルに重いパンチをくらうことになるのでくれぐれもご注意を! 本書はファンタジーなどではなく、ハードSFのそれに近い。小学生にして利己主義の権化と化し、魔法少女を単なる道具『駒』としか看做さない少年など、私は何故か好きなんですけど、苦手な人には生理的に拒否されるかも?

ジュブナイルやライトノベルとか、安易に思っていると卒倒させられますが、逆に魔法少女もここまで来たかと思うと、隔世の感があります。時代は変わったね。あやうく時代に取り残されるかと、心配になるほど鮮やかで新しい時代の小説です。

普通の人は著者の本だと、本書以外のものから読み始められるそうですが、私は本書で著者のファンになりました。大いに買い!!

他の本も順次読んでいきたいと強く思いました。神林長平さんの「七胴落し」にも近いかな? でも、未成年にはずいぶんと毒のある小説だよなあ~。

小説の中では解説されていないけど、少女の名前「りすか」はやっぱりリストカット由来でしょう。自らを傷付けることで魔法を発動し、死ぬと○○(perfect)になるのは、いやはや、ブラックユーモアの域をぶっ飛んでいます。

でも、魔法少女は可愛かったりもする。内容も面白い。表紙は、ちょっと首を傾げたが中のイラストはいいのではないででしょうか?アニメ化等を期待したい♪


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posted by alice-room at 18:30| Comment(2) | TrackBack(2) | 【書評 西尾維新】 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
TBありがとうございました。
表紙などに抵抗がありますが、西尾維新は面白いので、読み出すと止められませんね。(笑)
「りすか」は未読なのですが、最近読んだ「化物語」は面白かったです。ただ、月刊で刊行中の「刀語」の方は、少し漫画的過ぎるかも知れません。
仰るように、西尾維新は、単なるライトノベルに分類するには、過剰な要素が多いような気がします。
これからが楽しみな作家ですね。
Posted by lapis at 2007年02月26日 21:25
こちらこそ、いつも面白い情報有り難うございます。lapisさんのおっしゃるとおり、思いっきり私もはまりそうです(笑)。
いやあ~実に楽しみですね♪
Posted by alice-room at 2007年02月27日 01:36
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