2007年02月27日

「大聖堂の悪霊」チャールズ パリサー 早川書房

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あの分厚い「五輪の薔薇」の作者による歴史ミステリーです。な~んて本書自体にも書かれていますが、実はその五輪の薔薇を読んでいなかったりする。いや、重くてかさばりそうでそちらは手を出しかねています。単純に薄いし、大聖堂だからとこちらに手を出してみました。

いかにも英国風ミステリーという感じがします。特に人物描写は、行動パターンのまどろっこしさが「あっ、英国っぽいかなあ~」なんて思いますが、理詰めで問題を解決しようという姿勢が明確に出ているし、歴史上の事件と物語上の現在が相互に関係しあう辺りはなかなかうまいのではないかと思いました。

古い大聖堂を有する参事会員や旧弊な枠組みの中で生きていかざるを得ない人間達などを丹念に描いています。また、歴史上の問題を解決すべく大聖堂内の図書館にある古文書を調べるというのも、それだけで十分にそそられるものがありますが、私にはこのミステリーはイマイチ分かり難い!

直接の当時者だけでなく、後でこれまで表に出なかった人物の告白等により、最終的には全ての謎が明らかになるのですが、恥ずかしながら私よく理解できませんでした。謎説きや犯人は分かるのですが、そちらに関心がいくとそれ以外の主人公を裏切る友人の位置付けや、歴史上の人物の行動などがすっかり空白になってしまって「誰それ?」状態になってしまいます。

読者はみんなついていっているのでしょうか??? 

あちこち視点や謎が飛ぶのはいいのですが、それが収束しないで個々の論点で発散しているような感じなのです。

謎が解かれたというカタルシスを少なくとも私は得られませんでした。じっくり読み込めば、理解できそうでそれなりに味わいもありそうですが、この程度の本をそこまで読み込む気になれませんし、そんな時間があれば、もっと他の本を読みたい私としてはこれで終わりです。

大聖堂も出るし、古文書も出るし、参事会など、道具立てが魅力的な割には、イマイチとしか言いようがありません。もう少しなんとかすれば、魅力が倍増しそうな予感はするのですが、これは非常に惜しい作品と言えるでしょう。



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ラベル:書評 小説 歴史
posted by alice-room at 20:02| 埼玉 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 【書評 海外小説A】 | 更新情報をチェックする
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