2007年02月28日

「きみとぼくの壊れた世界」西尾維新 講談社

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私はライトノベルだからという偏見で、危うく大変な間違いを犯すところでした。ここ最近読んだ小説の中では、ダントツ一位の作品です。読み始めたら、読了するまで止める事ができず、昨日は2時間も寝ていません。(若くないんだから、死ぬってマジ、オレ!?)

誰よりも大切な妹、誰よりも大切な兄。濃密な近親関係の中、なんでもないはずの日常の世界で、あり得べくはずのない殺人事件が起こる。私には登場人物があまりに日常的過ぎて怖くてならない。こんな設定有り得ないと思える少年少女は、健全で羨ましい♪

ニアリーイコールの世界で、いるんだよこういうの。そしてあるんだよ、これに近いこと。ふと思い出すと、本当に小説よりも現実の方が酷いし、汚れてる。穢れている。既に自分以外のあらゆることに諦観と無干渉・無感動から成る世界で生きる身としては、辛いんだよねぇ~。やべぇ~、中学時代のアレコレを思い出した。泣けてくる・・・(号泣)。

さて、ジャンル分けをすると、謎解き学園ミステリーとでもなるのだろうが、そんなことはどうでもいい!!
 
メインの登場人物は、僕(兄)と可愛いい妹、文武両道の友人(男)とその幼馴染の友人(女)、保健室に入り浸りの友人(女)の計5人だけでほとんどこの小説世界は完結している。それが世界の必須構成要素であとは、無くても困らない。

あまりにも小さな小市民的日常世界。そこで展開される思春期の微妙な精神の揺らぎ。ある程度鋭い人なら誰もが経験する、ありがちなものなんだけど、どうしてこんなに巧みに描写ができるのかが不思議でならない。気付いてもその心理をここまで表現できる著者は、いやあ~ぶっちゃけ、ある種『ネ申』とか思っちゃいます、私。知っていても、私には文章での表現能力ありません(脱帽)。

成績優秀で学校一位。チビで巨乳なのだけど、視線(人間)恐怖症でずっと保健室登校。かなりの萌え属性、というのは抜きにしてもやたらと理屈をつけることで、世界との関わりを保とうとする究極的に屈折した女性(=病院坂黒猫という名)が堪らん。小説の作中人物にはまるということは、ここ数年経験したことなど無かったのですが、マジ病院坂LOVEッス!

病院坂のフィギィアあったら、絶対お買います。万札握り締めて、保健室行きますよ、マジに(←本読めば、納得)。

ハルヒ関係はこの際、捨ててこちらに鞍替えですね。病んでいたっていいジャン! そういうの現実にもたくさんいたし、デートもしたけど、なかなか屈折した(=他の人と観点がずれている)知性という奴には出会えないもんです。リスカや自傷もなあ~ちょっとね。

ドンドン話題がそれていくけど、本書はライトノベルではないしょ! ライトつ~か、ヘビィ以上のディープかと思いますけどね。登場人物は、みんなどっかしら病んでいるのもまた、今っぽくてイイ。桜井亜美の小説と違って、登場人物を素直に愛せるのが嬉しい♪ あれって愛す対象が見つけらんないから困る。まあ、私には『ときメモ』よっか、よっぽどトキメキますね。

私がこれまで書いたのを読むと誤解しちゃうかな? とにかく人間の(特に思春期の)精神状況の描写が絶品です!! 純文学以上に、人間心理に踏み込んでますよ、これ。弱い人間が見ると、悪影響を受けるかもしれませんが、神経すり減らしながら読むのもまた一興かも。

ああっ、病院坂と一緒に保健室で授業さぼっておしゃべりしていたい♪ 中学時代は病院坂に負けず劣らず、保健室を根城にしていた私だが、あの頃はそんな切れる奴いなかったもんなあ~。毎日同じことを繰り返している同級生を心から蔑み、夭折することしか念頭に無かった私が、未だに飽きもせず生きて、読書をしているなどいうのは、まさに煉獄の何物でもない。あの当時、これが予測できてたら、今生きていなかったネ。間違いなく!

とにかく、本書は最高だと思うんですが、これ以上の作品を書いていたら、著者は天才に違いない。

しかし、病院坂の友情が欲しい!!(我ながら、クドイなあ~)

きみとぼくの壊れた世界(amazonリンク)

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posted by alice-room at 19:25| Comment(4) | TrackBack(2) | 【書評 西尾維新】 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
alice-roomさん、こんばんは
「西尾維新作品キャラ占い」なるものをやったところ、なんと病院坂黒猫 が出てしまいました。
崩子ちゃんか子荻ちゃんが出ないかと期待していたのですが、予想外の人物の登場に驚いてしまいました。(笑)
TBさせていただきますので、よろしくお願いいたします。
Posted by lapis at 2007年07月10日 21:21
なかなか予想外の結果みたいですね。私も思い通りになりませんでした。こちらからもTBさせていただきますね。
Posted by alice-room at 2007年07月10日 23:17
alice-roomさん、こんばんは
『不気味で素朴な囲われた世界』の記事ですが、病院坂黒猫つながりでTBさせていただきますので、よろしくお願いいたします。
出来るだけ、ネタバレは避けたつもりですが、今一つ自信がありません。(苦笑)
それにしても、今年は西尾維新の本が、本当に沢山出ましたね。
Posted by lapis at 2007年12月09日 23:59
lapisさん、こんばんは。TB&コメント有り難うございます。
うっ、是非記事を拝見したいものの、自分でも本読んでからにするべきか? かなり悩みますねぇ~。

>それにしても、今年は西尾維新の本が、本当に沢山出ましたね。

本当にそうですね。嬉しい反面、微妙なところもあって複雑な気持ちですが、やっぱり嬉しいかもしれません(笑顔)。誘惑に弱いもんで・・・。
Posted by alice-room at 2007年12月10日 21:36
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