しばしば言われるように、本当に素晴らしい名著なのか期待といささかの懐疑を持って読んでみました。が・・・、かなりの分量にも関わらず扱っているテーマが広範な為に、それぞれの項目での解説が私的には全く物足りません。どうしても記述に細切れ感があって大変不満を覚えます。
また、著者自身が記しているように文献資料だけによる歴史再構築の限界は納得するものの、足りない部分を埋めて著書が追加して描く中世の世界観も、当然資料的な背景があるのでしょうが、いまいちその部分が本書の中では分かりづらいです。
また、あくまでも中世末として描かれている舞台がネーデルラント及びブルゴーニュという地域的束縛もあり、それが個人的にはかえって不満になっています。できれば、地域的限定からもっと自由になり、中世末期全般を題材としてもらえれば、良かったのにと思わずにいられません。
結果的に、私的には読書する価値を見出せず、150頁を過ぎた辺りから飛ばし読みに変えました。全ての項目及び頁に目を通しましたが、後は関心のある項目だけきちんと読むという形にしました。
項目の11~13ぐらいかな?きちんと読んだのは。後はあまり興味持てなかった。最近は、西欧中世に関する本がたくさん出ています。関心のあるテーマのそちらの本を読んだ方が、より詳しく面白い事が学べると思います。
ただ、一部に面白そうな記述があったので、そこだけ別途メモしておきました。
「モンタイユー」 とかの方がはるかにお薦めです。
今後もこの本、古典になれるのかなあ~と私的には疑いの思いですね。そもそも数百年ぐらい経ってからでないと、真の古典とは言い難いですしね。この本は無理かも??? 大変有名な本ですが、私はお薦めしません。
【目次】世界の名著 67 ホイジンガ(amazonリンク)
ホイジンガの人と作品
中世の秋
1 はげしい生活の基調
2 美しい生活を求める願い
3 身分社会という考えかた
4 騎士の理念
5 恋する英雄の夢
6 騎士団と騎士誓約
7 戦争と政治における騎士道理想の意義
8 愛の様式化
9 愛の作法
10 牧歌ふうの生のイメージ
11 死のイメージ
12 すべて聖なるものをイメージにあらわすこと
13 信仰生活のさまざま
14 信仰の感受性と想像力
15 盛りを過ぎた象徴主義
16 神秘主義における想像力の敗退と実念論
17 日常生活における思考の形態
18 生活のなかの芸術
19 美の感覚
20 絵と言葉
21 言葉と絵
22 新しい形式の到来
関連ブログ
「モンタイユー 1294~1324〈上〉」エマニュエル ル・ロワ・ラデュリ 刀水書房
「中世の星の下で」阿部 謹也 筑摩書房
「中世の窓から」阿部 謹也 朝日新聞社
「ハーメルンの笛吹き男」阿部 謹也 筑摩書房
「中世のパン」フランソワーズ・デポルト 白水社
「異貌の中世」蔵持 不三也 弘文堂
「刑吏の社会史」阿部 謹也 中央公論新社
「世界の名著 67 ホイジンガ」中央公論新~メモ
中世の秋、世の中では既に古典扱いなのかと思っておりました。中世史関連の本を読んでいると、必ずといって良いほど、言及されてますよね。
そんな名著ならば中世を学ぶ以上は読まなくては!と思い、数年前に文庫版上下を購入したものの、積読のまま忘れていたりします(苦笑)。
それと古典の件ですが、実際、世間的には古典として扱われていると思います。ただ、定番として数十年程度通用していることと、最低でも百年以上にも渡って厳しい歴史的淘汰を潜り抜けて現在まで評価されていることが同一の『古典』という表現で表していいのか、最近疑問に思っていたので、私個人の疑問も含めて、これ本当の古典になるのかなあ~という感想を書いてみました。紛らわしい表現ですみません。
何が古典かというのは、また難しい話ですが、この手の本は、当時は非常に優れていても現在から見ると、評価が逆転することさえありますから、より難しいかもしれませんね。
どんなに古くなっても普遍的に優れた価値を有するもの、ありそうでいてなかなか無いかもしれませんね。本当に。