2005年05月12日

「聖母の日」(上・下)ポール ウィルスン 扶桑社

seibo.jpgここんとこ、話題であった聖母のご出現と奇跡がテーマになっていると言われては読まないわけにいかないでしょう。ってな感じで読み始めたんですが…。

いわずもがなのような、典型的なアメリカの小説ですね。背景に出てくるものはイラク戦争や大統領選、国家保安局に始まり、ホームレスにエイズ。アメリカという国家の抱える社会問題が凝縮として至るところにはびこっている米国内向けドラマ。こいつも映画向きだなあ~。

まあ、読んでてそれなりに楽しく読めました。バチカンの奇跡審査官とか、いかにも~ってな人も出てくるしね。ですが、あくまでも移動の時間つぶしとかに向いてるくらいかな? これ読んで感動したり、知的好奇心を刺激されたり、宗教心を起こしたりなんて間違っても起こらない(それこそ奇跡でもない限り)レベルのもの。まあ、出版社が扶桑社さんですから、当然ですが。

ざっと言ってしまうと、イラク戦争で弾道を誤ったミサイルが秘密の封印された場所を開けてしまう結果に…。いかにもありがち(?)なベドウィンが死海文書よろしく巻物を発見する。で、その巻物には書かれている内容こそ、実は聖母の遺体(まさに!聖遺物)の隠し場所。とある運命の糸(意図)に操られ、巻物を読んでそれを発見する人達。そして、それを持ち出すと…、おお~なんということでしょう!! 聖母のお姿があちらこちらに現れます。そしてそれに伴い、常識ではありえない奇跡の数々が起こるのでした。それはやがて…。

非常に、粗筋的には興味惹くんだけどねぇ~。以前、読んだようなしっかりした知識的な背景を持った著者による小説(「クムラン」みたいな)でなく、舞台仕立てだけを借りたぐらいの小説なんで、すっごく展開が安易。まあ、ご都合主義とは言わないまでも、普通は遺体を発見するまでがアドベンチャーで盛り上がるんだけどね。すごいよ~、コンビニに弁当買いに行くレベルの気楽さで見つけちゃうもん。さすがU.S.A.(拍手)。

ただ、聖母が起こす奇跡も安っぽいこと、このうえない。ラストが後味悪いうえに、およそ敬虔さがない(アナーキスト的な)聖母のお言葉もいささか不快だった。お薦めはしないけど、飛行機や電車の中で時間つぶし的には悪くないかも。つまんないから嫌いってほどではないけどね。聖母やキリストという点では、全く意味の無い小説でした。次は、もっと面白い読もうっと。

関連ブログ
「聖母マリア」 竹下節子著 講談社選書メチエ 
スティグマータ 聖痕 <特別編>(1999年)

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posted by alice-room at 20:03| 埼玉 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | 【書評 海外小説A】 | 更新情報をチェックする
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