2007年03月16日

「シャルトル大聖堂のステンドグラス」木俣 元一 中央公論美術出版

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これも国会図書館に行ったときに借り出して読んだもの。といっても、大判なうえに頁数も多くて分量が多く、とてもじゃないが一日で読破できません。他の文献も調べていたので結局、こちらの本は第2章の途中までと、ざっと他の章を眺めてみたくらいです。

従って、書評にもならないのですが、自分自身への覚書代わりにメモ。目次だけ詳しく載せておくので調べ物をする時に少しは参考になるかな?

さて、シャルトル大聖堂関係の本を読むと頻繁に名前を見かける木俣氏が当時の文部省の助成金を受けて研究した成果物を出版したものがこの本です。

その為、最新の研究成果なのだと思いますが、あまりにも細かい点が多くて私のような一般人にはかなり辛い。ここで述べられている分節とは、要はステンドグラスを成立させている鉛枠でガラスとガラスを押さながら、つなげている仕組みを指しています。それらを丹念に調べて(シャルトル大聖堂のガラスって死ぬほど多いんだよ!)統計的に処理することで一定の傾向を導き出し、そこから一歩踏み込んで新しい解釈を主張するという流れになっています。

従来、ステンドグラスは彫刻も含めて文字が読めない人々にキリスト教の内容を教える為の「図説聖書」みたいな理解をされてきたが、木俣氏の主張では、確かにそうした点はあったものの、ステンドガラスだけ見ても聖書の内容など分かるはずもなく、必ずその理解には、聖書の知識とステンドグラスの指し示す意味の両方を理解している人の存在が前提であり、むしろそういった特別な人々を対象の中心にしたのが、ステンドグラスではないか?ということが述べられている。

また、実力をつけてきた商人などがステンドグラスの代金を寄進したので彼ら自身がデザインにまで意思を反映したから、寄進者としての商人などがステンドグラスに描かれた。と一般に理解されてきているが。

寄進の事実はあったにせよ、ステンドグラスのデザインは教会側があくまでも神の栄光の為に指示したのであって、その過程でそれぞれが自らの立場で現在の職業に励むことが望ましいことであり、それをデザインに反映したのも教会側からの意図に他ならないのではと述べられている。

ごく一部しか読んでないので、私の誤解等の可能性はご容赦願いたいが、結論的な部分については非常に面白いと思う。怠け者の私としては、結論だけ分かり易い形で書かれたものを読みたいなあ~。本書は大部でし、国会図書館は借り出せないから、その場で読破は
無理。おまけに一番大切かもしれない、細かい説明は読んでていて飽きてしまう・・・。

う~ん、どなたか詳しい方、結論だけ教えて~!と切に言いたい。
【目次】
第1章 シャルトル大聖堂のステンドグラスへの問いかけ―序にかえて
 1.1 「文字を読めない人々の聖書」をこえて
 1.2 解釈の前提 図像テクストの作り手と受けて
 1.3 テクストとしてのイメージ

第2章 分節システムと幾何学的構成―枠とイメージを結ぶプロセス
 2.1 はじめて
 2.2 シャルトル大聖堂におけるステンド・グラスの分節システム
 2.3 パネルと場面
 2.4 分節システムの3つのタイプとその基本的様相
 2.5 おわりに

第3章 比喩としての物語の実現―“放蕩息子の譬え話”の窓
 3.1 はじめに
 3.2 たとえ話とその視覚表現
 3.3 シャルトル大聖堂《放蕩息子の譬え話》の窓
 3.4 おわりに

第4章 幾何学的構成のはたらき―“使徒聖トマス伝”の窓
 4.1 13世紀フランス人における《使徒聖トマス伝》の図像表現の展開
 4.2 シャルトル大聖堂《使徒聖トマス伝》の窓

第5章 「ぶどうの木」としてのカトリック教会―“聖レオビヌス伝”の窓
 5.1 はじめて
 5.2 分節システムと幾何学的構成の特質
 5.3 中央軸線上の場面と《聖レオビヌス伝》
 5.4 周縁と中心、階層性、ネットワーク
 5.5 ぶどうの木がつなぐもの

第6章 「寄進者像」を読み直す―教会論的視点
 6.1 「寄進者像」の問題点
 6.2 「働く人々」と中世の教会論
 6.3 パンとキリストの身体、そして教会

第7章 聖像と偶像―13世紀初頭のカトリック教会とイメージ
 7.1 はじめに
 7.2 問題の所在
 7.3 偶像表現の特質
 7.4 偶像とキリスト教の信仰との対比
 7.5 「イメージの中のイメージ」としての聖像(1)
 7.6 「イメージの中のイメージ」としての聖像(2)
 7.7 おわりに

第8章 聖ニコラウス像を罰するユダヤ教徒―宗教的イメージをめぐるポレミカルな図像
 8.1 はじめに
 8.2 聖人像への懲罰
 8.3 「イコノクラストとしてのユダヤ教徒」というトポス
 8.4 イメージを信仰するユダヤ教徒
 8.5 おわりに
シャルトル大聖堂のステンドグラス(amazonリンク)

関連ブログ
「シャルトル大聖堂」馬杉 宗夫 八坂書房
「ステンドグラスの絵解き」志田政人 日貿出版社
「フランス ゴシックを仰ぐ旅」都築響一、木俣元一著 新潮社
「図説 大聖堂物語」佐藤 達生、木俣 元一 河出書房新社
ゴシックのガラス絵 柳宗玄~「SD4」1965年4月より抜粋
「大系世界の美術12 ゴシック美術」学研
「ロマネスクのステンドグラス」ルイ グロデッキ、黒江 光彦 岩波書店
「凍れる音楽-シャルトル大聖堂」建築行脚シリーズ 6 磯崎新 六耀社
posted by alice-room at 20:25| 埼玉 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | 【書評 建築】 | 更新情報をチェックする
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