2007年03月19日

「宗教改革の真実」永田 諒一 講談社

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ここんこと関心を持っているグーテンベルク以降の印刷革命の余波で、それと密接に絡む宗教改革にも関心が湧いてきて読んだ本。

安価で大量に印刷できる、まさにその技術を利用したイラスト入りのパンフで民衆に広まっていった宗教改革。実際に民衆の間では、どのようにそれが伝えられたのか、実に分かり易く説明してくれています。

宗教改革の契機にも一役買った贖宥状の販売が一方で聖遺物崇拝と競争関係にあり、どちらもカトリック信者を集めて金銭的利益につなげたいという思惑があったという視点は、私には目新しいもので大変面白かったです。

宗教改革が民衆の既存制度への不満からだけでなく、結婚という形式を内心的欲求から求める聖職者自身の存在なども私には知りえなかった視点です。

本書では具体的な事例を取り上げながら、民衆の立場から、宗教改革の諸相というものを浮かび上がらせていて、なかなか面白いと思います。特に当時、自治権などを持ち始めた各都市が現実的政治配慮から、カトリックと改革派の両派容認という立場を採ったり、逆にその辺の采配を間違って自治権を剥奪されてしまった都市の例なども興味深いです。

そうですね、あと、ルターが教会の扉に貼り付けた話。あれ、事実と異なるとかね。いやはや、学生時代、教科書で教わったことってみんな違うジャン! 聖徳太子っていう名称も今では教科書に出てこないそうだし・・・。歴史で教えるべきは、年号でも人名でもないことを痛感します。もっともだからこそ、歴史も生きていて面白いんですけどね。

欲を言うと、個々のテーマをもっと&もっと知りたいところですが、それは専門書にあたるべき事でしょうね。少なくとも本書をきっかけに見方が広がることは間違いないと思いますよ~。
【目次】
第一章 社会史研究の発展
第二章 活版印刷術なくして宗教改革なし
第三章 書物の増大と識字率
第四章 文字をあやつる階層と文字に無縁な階層
第五章 素朴で信仰に篤い民衆
第六章 聖画像破壊運動
第七章 修道士の還俗と聖職者の結婚
第八章 都市共同体としての宗教改革導入
第九章 教会施設は二宗派共同利用で
第十章 宗派が異なる男女の結婚
第十一章 グレゴリウス暦への改暦紛争
第十二章「行列」をめぐる紛争
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posted by alice-room at 23:41| 埼玉 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 【書評 宗教A】 | 更新情報をチェックする
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