2005年05月15日

ジョルジュ・ド・ラ・トゥール展 国立西洋美術館

聖ヨセフの夢

国立西洋美術館公式サイト

そういえば、一番観たいと思っていた肝心のマグダラのマリアがあまり無いと情報を得ていたのに・・・すっかり忘れて、ワクワク期待感いっぱいで観に行ったのに・・・(鬱)。

なっ、ない! マグダラのマリアが! ちょっといけてないマグダラはあったが、アレじゃない。私が見たいのは、もっと観る人の目を惹き付け、しゃれこうべに香油壺、十字架をアトリビュート(持ち物)にしたマグダラがな~い。実際、結構ショックだったりする。

全体としては、それなりに悪くないかなあ~って感じ。模作も想像以上に多かったけどね。ドラマティックな陰影は、確かにほお~と思うものの、私的には胸を打つ作品は無かった。確かにあれだけ集めるのはスゴイ事なのかなあ~とも思うが、個々の作品をそれぞれの美術館で観たら、正直素通りする自信がある(どんな自信だか?)。というのは・・・。

実際、ここの西美が所有している聖トマスも常設展で何度も見ているが、美女でもないし、悪魔も天使も出ないし、いつも素通りしてたもん。つ~か、今回改めて気付いたのだが、私が見たかった「常夜灯のあるマグダラのマリア」って、ルーブル所蔵なんだ。行ったけど、これっぽっちも記憶に無い。当時、マグダラのマリアには全く興味無かったし、ラファエロやロセッティ、モロー、ボティッチェリを観るのに忙しくて、それ以外はもうどうでも良かったし。モナリザも、元々そんなに好きでなかったから、人が切れてあまりいなくなった時、少しだけまん前に立ってみたけど、すぐ隣のボティッチェリに移動したしなあ~(今は展示スペースが変わってるみたいですが)。あれは逆に何度もじっくり観たし、背景の草花もチェックしてたけど。

メトロポリタン美術館も数はあるけど、テーマがバラバラでいかにも金で集めた的な感じがしてお目当てのもの以外は全然記憶に無い。従ってあそこにあったはずのラ・トゥールなんて知らなかったし、知っていても気にも止めなかったはず。そんなもんなのかな? 私が美的センスがないのかもしれませんが、日本にあったら、必死になって見たはず。我ながら、メディアに踊らされてる感じがしないでもない。

とにかく残念だった! 全体としては、まあまあだったけどね。観ないで後悔するよりは観ておいて後悔した方がマシだし。少しいいかなあ~と思ったのもあったけど。

模作ですが「聖フランチェスコの法悦」と真作の「聖ヨセフの夢」(上記の絵)。これらは結構好きかも。はっきりと劇的な陰影の効果が観てとれるし、構図的にも私は好き!! 一緒に観に行ったツレも「聖ヨセフの夢」は気に入ってたみたい。ただ、逆に「ダイヤのエースを持ついかさま師」はどこがいいのか不明? なんか印象が非常に平らな感じなんですけど。題材も興味の対象外だしね。

しょうがない自分でマグダラのマリアの画像を調べてみようっと。

【追記】
コメントを頂いた池上英洋の第弐研究室さんのブログを拝見してて改めて、この「聖ヨセフの夢」について感じたんですが…。

一番、大切な画面の中心をさえぎるかのように腕を暗く描くのって、いささか衝撃でした! 普通だったら逆側から描きそうに感じましたので。そうすれば、すべてがはっきり描けますし…。

視覚が限られて全て見えない一方で、見えるところのコントラストが著しいですね。また、今後、自分の子ではない主(あるじ)を生むマリアを守りつつ、周囲からの批判に耐えていく苦難の未来像を暗示するような劇的でいて、一抹の不安を感じさせるようにも感じました。これはじわじわ~っと心に響くものでした。

ここにはいいのが無かったマグダラのマリアにも通じるかな?深く主に帰依し、キリスト教を熱烈に崇拝すればするほど、自らを貶めずにはいられない不幸な身の上。しかもそれは、自分で選んだ生き方であったが故にますます苦しまねばならない。だからこそ、昼間は献身的な活動に専心する一方、一人夜には、悔いるしかない我が身。昼間の布教活動における精力的な「明」と夜の静寂空間における「暗」。絵画的な明暗をあらわす技法に長けているだけでなく、主題そのものの「明」と「暗」をも現しているように強く感じました・・・。

関連ブログ
美の巨人たち ラ・トゥール『常夜灯のあるマグダラのマリア』
マグダラのマリア 黄金伝説より直訳
「マグダラのマリア」 岡田温司 中公新書
posted by alice-room at 02:31| 埼玉 ☁| Comment(4) | TrackBack(2) | 【芸術】 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
TB御礼。

おかげで面白いBlogを知ることができました。『ダ・ヴィンチ・コード』をお好きなあなたはきっと、ウンベルト・エーコの『薔薇の名前』やコリン・ウィルソンの『賢者の石』もお好きなのではないでしょうか。面白いです。もし未読であればぜひ。
Posted by ike at 2005年05月15日 13:55
ikeさん、こんにちは。こちらこそコメント有り難うございます。

ご推察の通り、「薔薇の名前」は大好きな作品です。「賢者の石」も手に取ったことはあるのですが、実はまだ未読だったりします。その時は、本を既に山ほど購入していてもう持てなかったので…。

改めて、今度見てみます。情報有り難うございました。
Posted by alice-room at 2005年05月15日 15:03
はじめまして。TBありがとうございます。
alice-room さんのおっしゃってるマグダラのマリアの絵はTVで見たことありますよ。あれはいいですね。
「ダイヤのエースを持ついかさまし」の絵についてはぜんぜん感想が違いますね(~_~;)
いろんな感想を比べてみるのもいいものだと思いますのでこちらからもTBさせていただきますね。
Posted by みどり at 2005年05月16日 18:17
alice-roomさん、こんばんは
ラ・トゥール展の記事を書きましたので、TBさせていただきます。ご存じかも知れませんが、「ジョルジュ・ド・ラ・トゥール―再発見された神秘の画家」(創元社)に、もう一枚のモナリザの件で日テレに抗議した田中英道教授の若かりしころの写真が載っています。「ラ・トゥール」の本を書いていた事は知っていましたが、外国の本に載るほどとは思っていませんでした。
それでは、よろしくお願いいたします。
Posted by lapis at 2005年05月24日 23:20
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