ただ、エッセイというと誤解を招くかもしれないが、多数の資料から描き出される過去から連綿と継続して今に至る姿は、本当に面白くて実に魅力的! 私、モンマルトルの丘、実際に行ったときも全然いいと思わなかったんだけど(見晴らしはいいけどね)、本書を読んだら、全く別な場所のように思えています。それぐらい、この本の記述は、力があります。
と同時に、サン・ドニ修道院の歴史とゴシックにつながる話も他のゴシックだけにテーマを絞って書いた本よりも、しっかり描かれていたりする。「サン・ドニの旗」も本書で初めて知りました。王家が率先してサン・ドニ経由して神の臣下になることで、既に神の臣下である有力諸侯や貴族を神の名の下に、自分の下に集うことができるというのは、なかなかに政治的ですよね。それが「サン・ドニの旗」の象徴的な意味らしいです。
勿論、偽ディオニシオス・アレオパギテスのことも結構詳しく書かれていたりするし、ランスの大聖堂で国王が戴冠する真の意味、聖なる油を塗られ、ユダヤ教以来の聖なる存在として聖別されることなどの解説まであって至れり尽くせり。ある程度は知っている事柄でも本書程度の分量でこれだけの内容の密度があるのは珍しいと思います。
知っている人なら、すぐピンとくるでしょうが、ヴェズレーはマグダラのマリアの聖遺物があるところですし、サント・ボームはマリアが隠棲していた洞窟のあったところです。黄金伝説を踏まえて、その辺りの解説もなかなかの充実度です。
更に&更に第7章に至っては、マグダラのマリアやマルタ、更に黒人で召し使いであったされる「サラ」の話やそれらを祀ったお祭りの話まであって、これは是非目を通しておきたい本でしょう♪
マグダラのマリア好きだったら、チェックしておくべき本かと思います。お好きな方、どうぞ!!
【目次】フランス歴史の旅―モンマルトルからサント・マリーへ(amazonリンク)
第1章 モンマルトルの丘
第2章 サン・ドニとゴチックの光
第3章 フランク王の受洗―ランスにて
第4章 パリを救った聖女ジュヌヴィエーヴ
第5章 ブルゴーニュの風―ヴェズレーにて
第6章 プロヴァンスの岩山―サン・マクシマン・サント・ボームにて
第7章 「海の聖マリヤたち」
関連ブログ
「フランスにやって来たキリストの弟子たち」田辺 保 教文館
マグダラのマリア 黄金伝説より直訳
「黒マリアの謎」田中 仁彦 岩波書店
ゴシックということ~資料メモ