2013年07月27日

「フランドルの祭壇画」岡部 紘三 勁草書房

frandle.jpg

10月に、18万マイル使ってベルギーまでの特典旅行2名分を予約したので、廻る美術館や大聖堂の候補を絞る為、情報収集の一環だったりする。

ゲントの祭壇画、「神秘に子羊」は外せない作品ですが、それらを含めてフランドル絵画全般のお勉強には良さそうかと。

今のところ、半分ぐらい読んだところでしょうか?
一般向け図書にしては、読書に前提として要求する水準がかなり高いなあ~と思っていたのですが・・・。
後書きを読むと、著者の大学の紀要などに載せた論文等をまとめて一冊にしたものらしいです。

パノフスキーとかエミール・マールとか図像学の基本とかは、既知前提で引用し、それらを踏まえて説明されているので、その辺をそもそも知ってないと、何言ってるのか、全く分からないままかと。

国際ゴシック様式やらシエナ派の板絵とかはいうまでもなく、有名な装飾写本などもポンポン説明の過程で出てくるし、METのクロイスターやウフィツィ、プラド美術館や定番ところは実際に見たりしたことないと、説明が生きてこないかも?

そもそも載ってる図版が小さ過ぎるし、少な過ぎて、説明には役立っておらず、文字だけの説明になっていて分かり難い。

他の研究成果を踏まえての自説の主張なのは分かるものの、もう少し、その前提の学説を簡潔に触れたうえで納得のいく解釈と根拠を丁寧に説明したうえで自己の主張があるといいのだけれど、正直、解釈と根拠は専門家以外の私には、不十分過ぎて良く分かりません!

単純にロジカルか否かの視点で見ても、説明不足で結論に至る過程には、飛躍を感じてしまう。

エミール・マールの説明は、誰が読んでも思わず、納得しますけどね。

それはともかく、本書を読んで知ったことも多く、旅行に行く前に益々、関心が増してきました!
写本の方は興味があって少しは知っていましたが、ご他聞に漏れず、フランドル絵画も影響を受けているのですね。

あと14世紀のイタリア画の直接・間接の影響のあること。
「シエナ派の絵画が国際様式として全欧に流布していたから、たとえ反対の立場をとるとしても、その痕跡を完全に払拭することはできなかった。」と本書に書かれています。

それに、14世紀末から15世紀初頭の板絵の影響のあること。が書かれています。

去年、シエナの国立絵画館で、本当に素晴らしい装飾(彩色)を施された板絵の数々を見ましたが、あの影響を受けているフランドル絵画、なんとも楽しみです♪

ヤン・ファン・エイクがかつて装飾写本を手がけていたのでは・・・という話は、ツレからも聞いていましたが、本書でも「ベリー公のいとも豪華な時祷書」や「ブシコー元帥の時祷書」なども触れていて、おととし行ったコンデ美術館なども懐かしく思い出されました。

NYのクロイスターは相当昔だからなあ~。9・11の直後だったし。
プラド美術館はほとんど記憶に残ってなかったりする。アルハンブラ宮殿とタブローで見たフラメンコしか覚えていない。

いろいろと非常に懐かしいものを思い出すきっかけにはなりました。
フランドル絵画と装飾写本、シエナの板絵が結びつくことを知っただけでも十分に本書を読んだ価値がありました(私的にはね)。

ただ・・・、予備知識の無い人が本書を読んでもほとんど理解できず、面白いところはないかと思います。
前提を知っていれば、まあ、ところどころ興味を持てるところもあるし、勉強にはなるんですけどね。

私は勢い余って、重さ数キロの洋書まで購入しちゃいましたが・・・・床が抜ける・・・orz。
『flemish miniatures』

いつ読むんだ? 我ながら正気を疑う所業だけれど・・・・。
Flemish Miniatures from the 8th to the Mid-16th Century (Single Titles in Art History)(amazonリンク)

全然関係ないけど、今、このブログを書いていて気づいた!
映画「ナインズ・ゲート」の原著の題名って「フランドルの呪画」ジャン!

そうか、そうか、1人で納得して悦に入ってしまう私(ニヤリ)。
【目次】
1章 メローデ祭壇画
2章 ゲントの祭壇画
3章 ボーヌの祭壇画
4章 コルンバ祭壇画
5章 聖餐の秘蹟の祭壇画
6章 ホルティナーリ祭壇画
7章 マリア・ヨハネ祭壇画
8章 マギの礼拝の祭壇画
9章 マセイスの二大祭壇画
フランドルの祭壇画(amazonリンク)

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「フランドルの呪画(のろいえ) 」アルトゥーロ ペレス・レベルテ 集英社
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posted by alice-room at 07:15| Comment(0) | TrackBack(0) | 【書評 美術】 | 更新情報をチェックする
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