2013年08月04日

「日本電産永守イズムの挑戦」日本経済新聞社 日本経済新聞出版社

nihondensan.jpg

モーターで世界一の日本電産の創業者を扱ったお話です。
ソフトバンクの孫さん、ユニクロの柳井さんとここの永森さんの3人の仲は有名ですね。

以前、ビジネス雑誌の記事で元旦を除いて、朝6時ぐらいから夜10時過ぎぐらいまでひたすら会社で仕事しまくるモーレツ型ハードワーカーであり、『人の2倍働けば成功する』とか書かれていた記事を読んで、かなり興味深く関心を持っていました。

本書は1年前ぐらいに見つけて、購入したものの、積読状態だったのを改めて読んでみました。

三協精機のM&Aなど、実際のビジネス事例をドキョメントとして採り上げながら、その経過を追って説明していくのだけれど、具体的であるがゆえに、この経営者の考え方が非常にダイレクトに伝わってきて、勉強になります。

そのまま、ケース・スタディに出来そうですね。

結局は、1個人レベルの話に終始してしまう某自己啓発の女王様とは違い、複雑な思いを抱く、様々な人を巻き込み、適正利潤を獲得し続ける企業グループを先導するリーダーたる経営者の気概を強く感じました。

今時の風潮ならば、ブラック企業扱いされかねないですが、実際、これぐらいやらないと利益なんて出ないだろうなあ~とも思います。

コスト低減の為の施策をどこまで徹底的に追求し、個々の従業員の所作や発想の隅々までそれが行き渡っているのか? 当たり前ですが、経費削減をお題目としてではなく、真に追求できるところは強いです。

何度言われても、やらない、出来ない人は、マジ去って欲しいと思うし、それを許容する連中はいらんでしょ。しょうもない会議で、業者から紹介された情報システム系の事例紹介する暇あるなら、さっさとハウスリストの現状分析や過去に行った販促結果の詳細の検証データでも作れって!

ベンチャーのくせに無駄に時間を取る暇あるなら、さっさと手と足動かして、叩き台の資料でも作ればいいのに・・・・。なんか、かつていたベンチャーと比べても遅過ぎて、ぬる過ぎる・・・・。

マーケティングの基礎から、勉強し直して欲しいかも?

ツィッターの分析がどうとか、100年早いレベルなのに・・・・足元見て、まず、当たり前の販促モデルぐらい構築して欲しい!!

上記、本書とは関係ない個人的な愚痴です。


さて、経費を徹底的に切り詰める永森流。

私も以前のベンチャーで勉強させられたものなあ~。徹底的にあいみつとって、そこで出た最低価格を、競合他社にさらして更に新しい見積もり価格を出させ、最後には業者から原価や工賃の明細を出してきて、もう利益無しであることをさらしてくるわけですが、それを頭に入れながら、再び、現在の最低価格を提示した業者にも削れる部分は削らせて更に価格を下げさせる。

一旦、業者選定後も用件定義の段階で不要な機能をなくして、更に価格を下げ、最終的な契約時にも現金払いであることを強調しつつ、業者の責任者同席の場で更に出精値引きを迫ったりする。

本書にもひたすら「ねごれ、ねごれ、ねごれ、ねごれ、ねごれ・・・・」と出てくるわけですが、大いに共感を覚えました。経費1円以上は全て社長決済というのも、そこまではないですが、経費を削る努力としては効果的だろうなあ~と思います。

ただ、勘違いしてはいけないのが、無意味な残業を強いる根性論ではなくて、むしろ徹底した合理主義者で、つぶれかかった会社を黒字化する為に1年間なら1年間と期限を区切って、労働時間を長くする一方で労働の密度を高くし、労働生産性を高めるきわめてロジカルな経営手法だと思います。

理屈で分かっていてもそれが種々の抵抗でうまくいかないのが、常の世の中ですが、そこをひたすら情熱と実際の行動力で示しつつ、その成果の果実を共有する事で全社的な姿勢へと変化・定着させていく姿は、まさに生きた経営のお手本でしょう。

経営に限らず、何事でもあれ、情熱が無ければ成し遂げられませんしね。

情熱だけでは人がついてこないのもまた真実であり、本書を読んでいるとその人の生き様とも重なり、勉強になります。

その一方で、コスト削減によって生まれた利益を投資へと積極的に振り分けていく点も見逃せないでしょう。M&Aは事業拡大のスピードを加速させるものではあるが、継続的な先行投資と相まって、相乗効果が出さなければ、企業として永続的な発展にはつながらないでしょう。

技術への投資、と同時に人への投資も行い続けることは、絶対に&絶対に必要でしょう。
今の会社は、資本金は大きいものの、人への投資は、以前いたベンチャーの何十分の1でこりゃ、中途採用で人は集まっても、次々と辞めていくのも道理かなあ~と思ったりする。

もっとも人の採用方法で食事を食べる速さっていうのは、まあ、分からないでもないけれど、なかなか一般化しにくものではあるだろうなあ~と思いました。基本、ビジネスはせっかちの方が仕事は速いけどね。

不確実性下で次々と意思決定を進めていかなければならないこのご時勢に、100%資料や情報が集まってからなんて待ってることなんて、出来ないし、仮に出来た際には全て手遅れである以上、瞬間・瞬間で判断が求められるのだから、一定程度の確度を確保できたなら、意思決定は早ければ早いほどいい。

間違っていたら、即座に軌道修正して次の意思決定に反映させていくことの方が結果的に、より正しい選択につながるであろうと思われるしね。

読み手の関心や読み手の経験にもよるものの、本書は読み手の水準に応じたものを返してくれる(与えてくれる)良き指南書足り得るかもしれません。

少なくても、私にはたくさんの気付きを与えてくれ、大変勉強になりました。
【目次】
第1部 ドキュメント 三協精機製作所再建
第2部 永守イズムの源流
第3部 永守流経営のエキス
第4部 素顔の永守重信
日本電産永守イズムの挑戦 (日経ビジネス人文庫)(amazonリンク)
ラベル:書評 ビジネス書
posted by alice-room at 19:44| Comment(0) | TrackBack(0) | 【書評 実用・ビジネスB】 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
コチラをクリックしてください

この記事へのトラックバック