
ベルギー旅行の準備中に、中世以降忘れさられていたブリュージュを一躍有名にした19世紀の小説があったと知ったので読んでみました。本自体は絶版みたい。
歴史の流れの中で、一時の栄光を遠く離れ、堆積する時間の滓と共に、灰色にくすんでひっそりと生きている都市、ブリュージュ。
その都市のノスタルジックなイメージに、最愛の人を失った悲しみを抱えた男の辿り着いた先というのが相互に干渉しあい、融合していく中でこの小説は語られていきます。
著者が「はしがき」で語るように、この都市の風光と鐘がそこに滞在する人々を育成し、影響し、規定していく・・・。
著者はブリュージュに住んでいたのではなく、ゲントの住民だったようですが、まあ、近いしね。
ゲントの方がブリュージュ以上に寂れていたのでしょうが、過去の栄光の大きさとそれが遺したもののと(執筆された)当時の対比からして、より一層ブリュージュの都市のイメージが鮮烈(灰色の都市とはいささか不整合な言葉ではありますが)だったのかもしれません。
おりしも私が行く10月は、もう観光の季節じゃないだろうし、まさに「灰色の都市」の片鱗が見られるかもしれません。今は十分繁栄した観光都市だろうとは思いますが・・・・。
本書に出てくる男のように、街を怪しげに徘徊してみたいものです・・・・。
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