
最初は、12世紀ルネサンスの延長線上で、古代ギリシア・ローマの古典を求めるブックハンターの物語だと思っていました。
勿論、それはそれで正しい本書の特徴の一端であり、「ビブリオマニア」と言ってもいいのですが、それにもまして、衝撃的な内容でした。
長く失われていた古代の知識としてエピクロス主義を伝えるルクレティウスの「物の本質について」。
その影響がかくも大なることを私は知りませんでした。
失われた古典が12世紀ルネサンス、続く、ルネサンスの文芸復興でさまざまに発見され、それが時代に大きな影響を与えたことは知っていても、このエピクロス主義については、全く寝耳に水、っといった感じでした。
原子論がねぇ~、ここで出てくるとは・・・。
またエピクロス主義(快楽主義)が、そもそもそういう意味であることさえも無知な私は本書を読むまで十分に理解していたとは言い難い状態でした(お恥ずかしながら・・・・)。
思想史・哲学史としても興味深いし、写本を含めた書物そのものに対するあくなき欲求である「愛書狂」の話としても面白いです。
そして、どんなに地位が上がっても、金に恵まれても人は人であることそれだけではなかなかに自由になれないということを痛感しました。
人は理想を求めながらも、現実という障害に阻まれ、押しつぶされながらもそれでもなお、理想を捨てずに、日々の日常を行き続けていく。辛い、ただひたすらに辛い現実がある訳ですが、そこになお留まり続け、生きていく。
人間ってのは、いつまでも経ってもその辺が変わらないみたいですね。
過去の話ではあっても、まるで今の自分のことのように共感し、考えさせられます。
どっかに閉じこもって生活の心配なく、朝から晩まで好きなだけ本を読めれば幸せなのですが、なかなかそうはいかないのが人生であることをこの歳になっても、改めて気付かされます。
いろんな意味で本当に学ぶことも多く、勉強にもなるし、大変、興味深いので、これは強くお薦めします!!
基本が分かっている人なら、本書の伝える豊富な知識・内容を存分に楽しめるかと思います。
これは購入して手元においておきたい本の一つです。
一四一七年、その一冊がすべてを変えた(amazonリンク)
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