2013年09月21日

アートのトリセツ:取扱説明書 タピスリー

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アートのトリセツ:取扱説明書 タピスリー
◇【毎日新聞より以下、転載】
「意味深」が生む魅力

 古くは、ダビンチの「モナリザ」。最近なら、フェルメールの「真珠の耳飾りの少女」。来日が話題を集める世界的美術作品と言えば、圧倒的に絵画が多いが、例外もある。フランス国立クリュニー中世美術館が所蔵し、国立国際美術館(大阪市北区中之島)で公開中の「貴婦人と一角獣」(1500年ごろ、羊毛、絹)は6面1組の連作タピスリー。中世の欧州美術を代表する傑作と目される。6面そろってフランス国外に持ち出された例は過去1度(1973〜74年に米・メトロポリタン美術館で展示)だけ。今回の日本行き(東京、大阪)は世界の美術関係者を驚かせている。

 タピスリーはフランス語(英語はタペストリー)で、つづれ織りの壁掛けのこと。平織りの一種で、緯(ぬき)(横)糸で経(たて)(縦)糸を包み込み、経糸を見えない状態にして、絵や文様を織り出す。起源は紀元前で、欧州では14世紀後半から16世紀初めに黄金期を迎える。装飾品であると同時に防寒機能も備え、領主などの富裕層の間で重宝された。

 あまたの中で、19世紀前半、フランスの古城で調度品として“発見”された「貴婦人〜」が別格の地位なのか。要因の一つとして、同世紀の世界的作家、メリメ、ジョルジュ・サンドらが作品などで言及、絶賛したことが挙げられる。これによって広く知られるようになり、1882年に国家買い上げの美術品へと出世を果たした。

 6面合わせた全長22メートル。注文主は、リヨン出身の一族の当主の可能性が指摘されている。キリスト教の信仰の手引書として、1498年ごろに制作された彩飾写本「アンヌ・ド・ブルターニュのいとも小さき時祷(じとう)書」の挿絵画家が下絵を描き、織られたのは、北フランスやフランドルあたりと考えられている。

 6面いずれも真ん中に貴婦人、右側に一角獣、左側に獅子を配し、背景は赤色の千花模様。5面は人間の五感(「触覚」「味覚」「嗅覚」「聴覚」「視覚」)を表すといわれ、「触覚」は、立ち姿の貴婦人が左手で一角獣の角を触る。「味覚」では、オウムが菓子をついばむ。

 唯一、分かりにくいのが、最後の1面「我が唯一の望み」。他とは異なり、幕屋が張られ貴婦人は首飾りをしていない。幕屋に記された銘文にちなむ画名も、多様な解釈の余地を残す。テーマについては心や愛など諸説出ているが、今もって未解明。謎めいた雰囲気を醸し出し、「貴婦人〜」全体の価値と魅力を押し上げる。クリュニー中世美術館の展示室の改装に伴い、フランスの至宝を関西で鑑賞できる幸運に感謝したい。
この記事を読んでふと思ったのだけれど・・・・。

都内の新国立美術館(六本木)でやってた時に観た際には全然気付かなかったが(あの時は、パリの中世日美術館で観た時との印象の違いや、こんな解説無かったよなあ~とか思ってた)、これを読んで改めて装飾写本(時祷書)の挿絵画家が下絵をねぇ~とピンときた!

ゲントの「神秘の子羊」と同じジャン!

しかもフランドル辺りとか書かれてるし、フランドル地方っていたら、まさに絹織物を初めとして奢侈品の織物商品の生産・流通基地。来月は諸事情で行けなくなったベルギー旅行の為、事前にさんざん勉強したんで・・・・(笑)。

わざわざ、「中世の秋」まで読み直した(やっぱりつまんなくて途中で止めたけど)ぐらいで、膨大な装飾写本をこの辺で大量に作成していたことも知りました。(わざわざ flemish miniatures まで購入したんだもんね。)

まあ、そんなこんで関心を持って、早速、以下を調べてみるとまたまた興味深いことを発見!
>1498年ごろに制作された彩飾写本「アンヌ・ド・ブルターニュのいとも小さき時祷書」

英語だと "Prayer Book of Anne de Bretagne" となる。
本当はフランス語の方が正確なんだろうけれど、私の語学力の拙さとそもそも所有しているのが、金にあかせて購入したアメリカのあの(!)モーガン・ライブラリーなんだし、まあ、英語でいっかってね。

そうそう、ポイントはやっぱりあのモーガン・ライブラリーが持っているってこと。
やっぱりNYに見に行かなきゃなあ~。個人的には、9・11の一ヵ月後にNY行った際にMETは正直、期待外れでしたが、モーガン・ライブラリーの存在さえも知らなかったもんなあ~。

改修中で見れなかったかもだけれども・・・・。

ゲッティ美術館もあそこもたくさん持っているので行きたいけれど、まずはこっちだなあ~。
ここ数年、装飾写本で調べると必ずモーガン・ライブラリーに辿り着いたりするんだもんねぇ~。

実際、METにタペストリー関連の資料がPDFで置かれてますね。
まだ、ちゃんと読んでないけれど。

いろんな断片的な知識がこうやって結びついていくのはなんとも楽しい限りです♪
あ~ベルギーかモーガン・ライブラリー行きたい!!

ついでに、いろいろネットで調べていたらこんな本を見つけた。
まだ積読本が消化出来てないし、高いから買えませんが、もう少し古書価格が安くなったら買いたいかも?
本当は図書館にあればいいんだけれど、日本だと買わないと無理だろうなあ~。

The Cultural and Political Legacy of Anne De Bretagne: Negotiating Convention in Books and Documents (Gallica)(amazonリンク)

関連サイト
モーガン・ライブラリーの Prayer Book of Anne de Bretagne
THE UNICORN TAPESTRIES WERE MADE FOR ANNE OF BRITTANY
The Metropolitan Museum of Artの資料より

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posted by alice-room at 23:53| Comment(0) | TrackBack(0) | 【ニュース記事B】 | 更新情報をチェックする
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