それだけ思い入れあったのでDVD化された時は狂喜乱舞して速攻購入したものでした。で、何度も見ているのですが、久しぶりに見直したので感想でも。
やっぱりこの映像の独特の感覚は秀逸です。ややもすると、アングラ系の舞台でも見ているような妖しさが漂っていますが、呉モヨ子の可憐さなどは妹属性で十分過ぎるくらいの萌え対象でしょうし、母の慈しみに満ちたしぐさなどそれぞれもパーツだけでもヤバイでしょう。
しかし、なんと言っても九州帝国大学にあって世界に誇る日本の頭脳とも言うべき二人の傑出して人物がなんとも魅力的♪ 一方の正木博士を演じる桂枝雀は、豪放にして人知れず苦悩する繊細な魂を有し、同時に学問の為に全ての物を犠牲にして悪魔と取引する怪人物を好演している。特に本作品で、千年以上にも及ぶ昔から続く事件の再現で重要な役目を果たす人形劇における活弁士の如き語りは、これぞ至芸とでもいうべき絶妙の語り口調だったりする。
勿論、これに対する室田日出男演ずる若林博士もひとくせもふたくせもある紳士で、学問に対する情熱においても、またその為になら、全てを犠牲にしてもかまわないという思いについてもまさに正木博士と拮抗しうる怪人物を演じています。どちらの立場も物語の進行中、場面場面で入れ替わり、同時に時間軸さえもこれが現在の話なのか、過去の回想時のものなのか、過去のその時点そのものなのかも微妙に揺らぐ構成となっていて、一回見ただけで内容を理解するのは難しいでしょう。
それでも、あの原作を元にしてよくぞここまでの映画化が出来たと思います。原作ファンからの評価はいろいろとあったようですが、私は映画を見てから原作を見たクチなので、本作品を大いに評価しています。当然、どこをどうしても原作の方が圧倒的に素晴らしいと感じているのも事実ですが、原作自体のあれだけの完成度を前にして、誰が映像化しても逆に本作品以上に出来ないような気さえします。
少なくとも私は映画を見てから、原作を読めて幸せだったと思います。もし、まだ原作を読んでいない方なら、まずは映画を見るというのも一つの手でしょう。本作は紛れもなくカルト映画にジャンル分けされて、決して一般ウケする作品ではないでしょうが、絶対にはまるタイプの人がいる作品でしょうネ。
原作のストーリーがなんとも説明ができない素晴らしさなのを受けて、それを映画という二時間の枠に納めつつ、まがりなりにも意味が分かるストーリーとして再構築されているのも凄いです。音楽と映像の異様に調和した美しさや世界観も、魅力の一つでしょう♪
とにかく一度見れば、薄っぺらな日常的世界観が崩壊していくかのように感じられることでしょう。原作を読んだ人が、頭の中を何ものかがぐるぐる回転してしまって抜け出せなくなるというのは、この映画にも当てはまるような気がします。
変なヒト、変わり者のヒト、是非見ましょうネ♪(笑顔) 変な薬なんぞ使わなくてもすぐにトリップできるでしょう。
そうそう主役の松田洋治による呉一郎ですが、あの蜷川氏がこの役に推薦したそうです。演技力にも定評があり、さもありなんって感じですね。桂枝雀氏に至ってはその後自殺未遂があって亡くなってしまい、大変残念な限りです。
いろんな意味で興味深いのですが、この作品は基本中の基本でしょう。どんな類の人にとっての基本かは、あえて書きませんが(苦笑)、少しでも関心があれば、絶対に見ておきましょう。怪奇趣味の妖しい要素が満ち満ちている素敵な作品です。美少女が出てきて、死体が切り刻まれて・・・わあ~、いっぱいだあ~(ってオイ!)。
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関連ブログ
「死後の恋」夢野久作 出版芸術社
ユメノ銀河(1997年)石井聰亙 監督
「暗河 21」1978年冬 葦書房
「楊貴妃後伝」渡辺龍策 秀英書房(1980年)
「図説 地獄絵を読む」澁澤龍彦、宮次男 河出書房
♪⌒ヽ(*゜O゜)ノ スゴイッ!!!
と思いました。
本当にこれだけの映画に作り上げたのは、快挙以外の何物でもないと私も思います。これを観て以来、未だに記憶が色褪せることがありません。
できれば、映画館で一度観てみたいです!!
コメント有り難うございました。
僕も久しぶりに、この映画を見ました。
原作よりは劣るとはいえ、やはりこの映画は傑作ですね!
「変なヒト」という自覚はないのですが、仰るようにトリップできました。(笑)
TBさせていただきますので、よろしくお願いいたします。
>「変なヒト」という自覚はないのですが、仰るようにトリップできました。(笑)
それは気付かないだけで・・・・あっ、冗談です、たぶん・・・。失礼致しました(お辞儀)。
でも、たま~に見るとホントになんか現実感覚が揺らぐような気がします。
そして、映画を見ると、また本も読み直してみたくなって困ります(苦笑)。
そういえば・・・
ドグラマグラの初版本を以前見たことがありますが、欲しいんですけどねぇ~。10年以上前で70万円のお値段でした。貧乏な私には、復刻版の沖積社のを購入するのがやっとだったことを思い出しました。
あの本、どこにしまったのやら???
lapisさんのところでのコメントにアンテナ立ててるわたしです(笑)。
わたし、当時大阪市内・京都市内のあらゆる上映会場に出没した記憶があります。
犬神博士で夢野に溺れたのですが、ドグラ・マグラは映画を見てから原作へゆきました。
わたしにとって、ドグラ・マグラの原作と映画はブリキの太鼓のそれと匹敵です。
どちらもメチャメチャ好きです。
'96年くらいまでハリウッド映画と一切無縁で、マニアックな作品しか見ませんでした。←ヲタ。
とにかくこの映画は面白いです。
今でもわたしの中ではある種の第一位のまま、燦然と輝いてます。
それからウンタマギルーですが、自分で書いてからネットで探すと、YAHOO動画で4/28頃まで無料で見れます。あれはVTRもDVDもいまだに手に入れられず、パンフを繰り返し眺めるばかりなので、久しぶりに見れて嬉しいです。
因みにこちらがそのアドレスです。
http://streaming.yahoo.co.jp/c/t/00026/v01409/v0140900000000356912/
長々と失礼しました。
犬神博士もいいですねぇ~、悪魔祈祷書なんてのも私は大好きです♪
>ドグラ・マグラは映画を見てから原作へゆきました。
私も映画から原作へ向かったクチです。同じく。
若い頃は、基本的にメジャー系を避けてサブカル系のものを好んでいたので映画なども単館ロードショーとかが多かったですねぇ~(フフフ)。
ウンタマギルー情報有り難うございます。ほんと懐かしいです。私も今度の週末にでも再び見てみたくなりました。あの不可思議な空間というか、間がいいんですよねぇ~。楽しみです♪
最近、あまり映画をみていないのですが、何か新しいものも開拓したくなりました。どうも有り難うございました(笑顔)