
以前読んだ「待ち望まれし者」の続きのようです。3部作の最終巻。真ん中は読んでなくて、最初良く知らずに1巻毎に完結してるかと思ったのですが、どうやら違っていたようです。
ただ・・・・前作を読まなくていきなり最終巻でもなんとか意味は分かるかと。
「ダ・ヴィンチ・コード」だけ読んでたら、十分ストーリー的についていけます。
ストーリーは、マグダラのマリアをイエスの伴侶にとし、真にイエス様自身が書き記した福音書「マグダラのマリアの福音書」とイエスの血脈を伝える一族が主役になります。
その歴史の中で「詩聖の王子」と呼ばれる存在として、ルネサンス期のフィレンツェのメディチ家一族のロレンツォや彼がパトロンとなったボティッチェリ、ミケランジェロを描き、また現代の「詩聖の王子」として現代の人を交互に描く小説になっています。
それなりによく調べて書かれているので(一応、私はほとんど既知の内容ですが)、ふむふむと頷きながら、読み進めていましたが、悪い意味で必要以上と思われるカトリック批判と、70年代のウーマン・リブ運動のノリがいささか時代錯誤的で読後感があまり良くありません。
無理やり肩肘張って女性の地位を叫ばなくても、自然体で対等且つ、普通に接すれば良いだけかと思いますが、女性擁護の過剰な不自然さが読んでいて大きな違和感として感じられてしまいます。
理性的な面を唱えつつも、実際は情緒を必要以上に尊重し、女性の感覚重視といった悪しき女性特有の面が色濃く出てしまい、小説としてはかなり駄目になっているように思えました。
あまり意味のない伏線がきちんと回収されないまま、放置されるものが目立ち、結局、何の結論もないまま、適当に終わってしまっています。
サヴォナローラも一時、華々しく登場しますが、それがストーリーに果たす役割がはなはだ疑問で本書の物語にそもそも何の意味があるのかと考えると、無駄・無意味以外の感想が浮かびません。
努力は認めますが、ストーリーテラーとしては所詮、同人誌レベルかと。
これを商業小説化した出版社・担当者は、明らかにダ・ヴィンチ・コードの便乗商法のそしりを免れないでしょう。
まあ、一定の利益は出たかもしれませんが、この作家はこのネタのみ一発屋で終わるかと。
そんな程度のお話でした。
よく勉強されているのですが、もうちょい踏み込むと違ってきたと思います。
ユマニスムとか、もっと&もっと深い意味で掘り下げると、本書もまた違ったものになって、面白かったであろうに・・・と思うと大変残念でした。
結論、本書は読む価値なしかと。
詩聖の王子 イエスによる福音書 (ソフトバンク文庫)(amazonリンク)
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「パトロンたちのルネサンス」松本 典昭 日本放送出版協会