2005年05月23日

「黒い聖母崇拝の博物誌」イアン ベッグ  三交社社

他の本でも時々出てくる黒い聖母。イシスを初めとする大地母神崇拝の流れをその背景に色濃く持つと言われていますが、もう少し詳しく知りたくて買った本。だけど・・・この本をいくら読んでも役に立つ知識は得られません。

だって・・・。
これ内容を評価する以前に完全に日本語としておかしい。各文書がそれぞれ別なことを述べていて、次にくる文章と繋がらない(ヒド過ぎる!)。私は以前、通信添削の小論文の添削をしていたが、その時の感覚で言うと完全に零点。文章として成立しないほど、日本語としておかしい??? 読むに値しないし、読んでも意味が通じません。

さらに内容ですが、扱ってる領域は非常に広いです。各地の大地母神や神話、聖書外典を初めとし、各地の教会に伝わる伝説・伝承、有名ところのオカルト本やら何やらまで網羅してあちこちから引用の限りを尽くしている。但し、解説がほとんどなく、断片的な剽窃もどきで読書に対して必要な説明がなくおそらく前提となるべき本(レンヌ=ル=シャトーの謎、等々)を30~40冊ぐらい読んでないと理解できません。馬鹿なことに、私はそのうちのおそらく20冊以上は読んでるので時々、著者が何を書きたいのかピンときてしまう箇所があり、筆者の気持ちも推測がつくのですが、極め付きに文章が下手です! 知っている人以外には、恐らく分からないような書き方してます。

だって、いきなりベルナールやオック語、プリウス団、ケプラ・ナガスト、プレスター・ジョンとか言われて分かります? 私はみんな他の本を読んで知っているから、ああ、あれね、で済みますが、自分でも読んでなかったら、絶対に理解できない自身があります。

翻訳者の方がタイトルに「博物誌」と入れてますが、これは断片的な知識もどきがバラバラで集まってますよ、という意味に過ぎず。きちんと整理されて情報としての価値を有するような学問的な博物誌とは全く違います。新聞や雑誌の切抜きを集めた方が、はるかに博物誌的かも?そのレベルのひどさ。

原著を見ていないので訳者を批判するのも公正か分かりませんが、失礼ながら翻訳者は関連文献を調べていないのが多そうです(10冊も読んでないんじゃないかな?)。きちんと根本的なものを理解していないうえで、ただ英語を日本語に置き換えているかのような印象さえ受けます。勿論、原文のせいかもしれませんが・・・。

一応、文章内に出てくる単語に解説がついているのですが、私的には必要のない単語に解説がある一方で、もっと解説しないと分からないだろうというものには全然解説が無い。これって原著の注がそうなのかな? 失礼ながら著者は全く読者のことを考えておらず、本にするべき原稿でないような・・・。せいぜい、走り書きもメモレベル。しかし、ひどい内容だった。

勿論、これだけいろんなものを積み込めば、少しは関心の湧くところもあるが、引用のしかたがメチャクチャなうえに、著者が勝手に思い込みをこういう理由でこうだと断言してしまっているし、引用と主張が混同されていて資料としての価値も無い。

値段の高いゴミかも? まあ、うちのブログの内容からだけで勝手につぎはぎしてもこの半分近く書けるかも?マグダラのマリアとかは黄金伝説をそのままパクッてるだけだし・・・。購入して失敗した、あ~あ。もっときちんとした本でお勉強することをお薦めします。この本は駄目です。
【目次】
序章 黒い聖母にまつわる謎
第1章 東方の女神たち―黒い聖母の原像
第2章 古代ギリシャ・ローマの伝統とイシス―黒い聖母の原像2
第3章 ケルトとチュートンの神々―黒い聖母の原像3
第4章 キリスト教と娼婦の知恵
第5章 黒い聖母の象徴的意味
黒い聖母崇拝の博物誌(amazonリンク)

関連ブログ
「聖母マリア」 竹下節子著 講談社選書メチエ 
「異端審問」 講談社現代新書
マグダラのマリア 黄金伝説より直訳
「レンヌ=ル=シャトーの謎」 柏書房 感想1
「エチオピア王国誌」アルヴァレス 岩波書店
「大モンゴル 幻の王 プレスター・ジョン 世界征服への道」 角川書店
posted by alice-room at 22:25| 埼玉 ☔| Comment(4) | TrackBack(0) | 【書評 宗教A】 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
こんにちは。

ブルターニュにも黒マリアがいます。ほとんど本にはでていないと思いますが。

ドルイドの話はとてもおもしろかったのですが、あまりにも複雑で短文では書けません。
Posted by 三紗 at 2005年05月24日 06:19
三紗さん、こんにちは。ドルイドの集会から無事戻られました?(笑顔) お帰りなさい。

日本でもその地元の人しか知らない史跡とか神社とかありますけど、黒い聖母もそういった土着の信仰に根差したものなのかもしれませんね。

ブルターニュにもあるんですか、そういうのをフィールドワークするのって楽しいかもしれませんね。といっても、学者でもないとなかなか時間的な余裕が難しそうですが・・・。 

コメント有り難うございました。
Posted by alice-room at 2005年05月24日 13:56
TBありがとうございました。

黒い聖母は京極夏彦の「絡新婦の理(じょろうぐものことわり)」にとりあげられています。京極夏彦による、一連の京極堂シリーズを読んだことのある人なら分かると思いますが、例によって京極堂による黒い聖母についてのクドイ薀蓄が楽しめます。

京極堂シリーズの第一作の「姑獲鳥の夏(うぶめのなつ)」が映画化されて今年公開の予定です。
もし、これが当たればシリーズ第五作の「絡新婦の理」もいずれ映像化されるかもしれません。

「絡新婦の理」はダ・ヴィンチ・コードの読者の皆さんにも楽しんでいただける内容だと思います。

Posted by 秘密組合員 at 2005年06月16日 19:34
秘密組合員さん、こんばんは。京極さんも面白いですよね。特に妖怪に関しては、いろんなことを学べますし。最後に、合理的な説明をし過ぎて謎を謎として残してもらえない点だけが少し残念ですけど。そちらも映画になるんですか、知りませんでした。情報有り難うございます(笑顔)。
Posted by alice-room at 2005年06月17日 00:08
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