但し、良くも悪くも基本的なことだけに絞っている為、セミナーで配られる資料やパンフに毛が生えた程度。大まかな概念把握には有用だが、実際に仕事で使うにはもっときちんとした本を読む必要がある。本職のデータベースマーケティング担当者以外なら、有用だと思う。
私自身が実際に通販会社で専門部署でしていた経験から言うと、データ分析は所詮どこまでいっても机上の空論。実際に価値ある成果(=特定のルールを見出し、それを販促等で実践して売上を上げて、利益増加に資する)の為には、現場の直観を契機にそれをデータ分析で補強することで価値あるルールを見出せたと思う。
何故なら、単純に統計的に処理できるなら、ツールやパッケージソフトでいくらでもモデルは自動生成できるが、それを実際に活用して収益に寄与した会社が、どれほど例外な存在かは、誰もが知っている通り。何億も何十億もこの手の解析ツールに金かけて、売上が低迷して身売りした通販会社やその他の小売業者は無数にある。
例えばデータウェアハウス一つとっても、通常基幹系データベースはどんな会社にも存在するが、マーケティング用のデータベースを別に準備するのは非常な困難がつきまとう。単純に別途データベース機器の費用がかさむだけでなく、基幹系の情報があくまでも基本なので、それを加工する過程が必ず必要であり、更に追加的な独自要素を追加登録するなど、現場サイドへの過重な負担が発生する。
しかも、データベースマーケティングが十分に機能してなんらかの成果が出ても、それは他部署から見えにくいものであり、経営陣のよほどの支援がない限り、その存在自体を疎まれる事態さえ発生する。
友人のコンサルティングファームの奴も言っていたが、えてして現場は改革・改善を嫌う。たとえ非効率であっても、ルーティーンと化した作業の継続を好むものだから。
もしろ、その手のインフォーマルな抵抗によって社内改革が頓挫するのはありがちな話である。データベースマーケティングは決して一部署内に収まる仕事ではなく、会社全体の業務のありようにまで及ぶものだから、教科書的な話だけではほとんど必ず失敗するように思えてならない。
勿論、本書はあくまでも基本事項の説明に絞っているので私のいうような内容を求めるはそもそも間違いなのだろうと思うが、どこかで一言程度は、言及して欲しかった。絵に描いた餅はおいしそうだが、決して食べれないのだから!
また、基本的なモデルは簡単にできるのだが、パラメータの数値設定こそが一番の難題である。政府やシンクタンクが発表する予想経済成長率などがいい例だが、ほとんど同じモデルを使っているのにパラメータが違うだけで、出される数値は全然異なっている。それが現実に他ならない。
しかも私の経験からいえば、売上が伸びている会社には必ずそれなりの理由があるし、成功しているマーケティングにも何かしらの工夫がある。データベースマーケティングも教科書的な基本プラスアルファの部分が実は、非常に重要である。
そして、その部分はどの会社のデータベースマーケティング担当者も決して明かすことはない。分かっている人が聞けば、必ず納得してもらえる工夫ではあるものの、それが本や同業他社から漏れることはないと思う。実際に、いろんなルートで情報を集めたが、非常に特殊なルートでしかそれは入手できなかったものだ。
その辺についても、具体的なことは書けないにしても本書で少しは触れて欲しかった。あまりにも綺麗事だけで書かれているので、どうしても営業用パンフレットの豪華版という感じがしてしまう(=本当にその手の意味もありそうだが・・・)。もっとも、新しく入った部下などの自習用には有用だと思う。本書をざっと読ませてから、専門書でさらに基本的な知識を押さえたうえで、OJTをするのが良いだろう。そんか感じで部下を実際教えてきたしね。
まあ、基本書としては良心的な部類。
そうそうamazonのレビューで書かれている内容で納得できないところが多かった。LTVの意味が誤用と書かれているが、そんなことはないと思う。彼らは自分の知っているマーケティング用語とデータベースマーケティングの用語を混同しているように感じる。少なくとも、私が読んだもっと専門的な本でも本書と同じ意味で用語は使われていた。また、英文で資料を読んでいた時もこれで合っていると思う。恐らく、きちんとしたデータベースマーケティングの本を読んだことのない人達のコメントだと思う。無視していいコメントだろう。
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