2007年04月18日

「グーテンベルクの謎」高宮利行 岩波書店

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先日、グーテンベルクに関する本を読んで以来、活版印刷術やその発明による影響など大変関心を持っているのだが、その延長線上で読んだ一冊。書誌学の専門家として至るところで名前を目にする有名な高宮氏による本です。

岩波の「図書」に連載されたもの。非常に読み易く、初めてこの手の内容を読むには手頃な感じです。その反面、私は別な本でもっと詳しい話を読んでいたので正直かなり物足りなさを覚えた。本書の大部分は、巷に出ているグーテンベルクを扱った本に必ず出てくる当たり前のことばかり(発明者争い、写本と印刷の関係、グーテンベルクその人にまつわるエピソード等)で類書を読んでいるとあえて読む必要を覚えない。

唯一といってもいい本書独自の価値は、本書が慶応大学が丸善からグーテンベルク聖書を購入し、それをきっかけに行われたHUMIプロジェクトに携わった人物により書かれている為に可能だった、そのプロジェクトの一環として行われた他のグーテンベルク聖書との比較などで判明した書誌的知識。これが実に興味深くて面白い!

印刷の出来が良くて追加注文を受けたらしく、同じ頁でも版が異なることや一冊の本の中で初刷りの頁とその後の刷りのものが混在するなど、思わず「へえ~」を思うような情報がたくさんあります。
どうせなら、この部分だけに絞ってもう少し深い内容だったら、良かったんですけど・・・残念!! もっともそれでは、読者のパイが狭くて売れないか、この本。難しいもんですね。

あと、福沢諭吉がグーテンベルク聖書を見たと思われる証拠が実際に残されているというのもインパクトあったかも。「禁書目録」や「ポリフィーロの酔夢譚」についての言及もあって、少し売れしかったりもする(笑顔)。

総括すると、グーテンベルクや印刷革命についての入門者用。慶応大学のグーテンベルク聖書そのものについての書誌学的な話は面白いが、本書のタイトルであるグーテンベルク関係の本としては、内容が広く浅くで不足気味。図版等もほとんどない。

以上。
【目次】
序章 福沢諭吉と「グーテンベルク聖書」
第1章 中世の手書き写本
第2章 木版・銅版・活版
第3章 グーテンベルク神話
第4章 鏡職人グーテンベルクの妖術
第5章 発明者をめぐる論争
第6章 「四二行聖書」の前評判
第7章 「四二行聖書」を分析してみれば
第8章 「四二行聖書」の印刷インク
第9章 「カトリコン」の印刷方法
第10章 修道院にも印刷所
第11章 印刷術、ヨーロッパ各地へ
第12章 イギリスではキャクストンが・・
第13章 カリグラフィーの盛衰
第14章 聖書出版の自由と統制
第15章 マルチメディアの時代へ
グーテンベルクの謎―活字メディアの誕生とその後(amazonリンク)

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posted by alice-room at 22:51| 埼玉 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 【書評 歴史A】 | 更新情報をチェックする
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