2007年04月19日

「ある愛書狂の告白」ジョン・バクスター 晶文社

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普通の愛書家 or 書痴のお話かなあ~と思って読んだんですが、ノリがちょっと違う。著者は元々SF好きでSF雑誌の収集からスタートした古書マニアだったりする。

確かに本が好きなのは分かるのですが、知らない書名ばかりが出てきて私には関心がイマイチ持てない。自らがメディア関係の仕事をする中で著者と合う機会を最大限利用してサイン本を増やしてコレクションする話などがエピソードして語られるが、署名本しかも作者が生きている本にそれほど興味がない私としては、なんだかなあ~?って思ってしまう。

著者が集めるのは、レア本でマニア向け市場で値がつく話なのだろうが、稀稿本等では決してなく、個人的にはどうでもイイというのが率直な感想。そりゃ私も国会図書館にも無くて絶版のマニア向けのもので高い値段がつく本持ってるけど、それってなんかこの手の本の想定読者層と違う感じがする。極端の話、日本なら手塚治の鉄腕アトムの初版本とかのらくろが高いとかそのいう系の話で、全然面白くない。

ゴミ捨て場で漁る話や、蔵書家が死んだ後で古書価に無知な遺族から二束三文で買い叩く話なんて、ありきたり過ぎて陳腐。もうちょっと面白い話が聞きたかった。映画の「ナインズゲート」とか意味もなく触れても本書の収集レベルがそこまでではないようで、全く無意味。

e-bayでの購入など、今風の話もあるけどだから何?って言いたい!! 今のご時勢、ネットでの書籍探しと購入なんて当たり前でしょう。この私でさえ、こないだも海外の古書店から本買ったばかり。決済なんてカード使えるから、とっても楽だよ。(ただ、セキュリティとかいささか心配なのも事実だけど。)

それにせっかくコレクションをした本を売るというのも、ちょっと論外のような気がする。重複した本や状態の良くない不要な本を一部売るなら、分かるけど、コレクターってどんなことしても当人が生きている間って本を売らないもんだよ。売った時点で少なくともその人は『愛書狂』には値しない、既に失格だと思うのだが・・・。

読みもしない本を貯めるだけ、貯めて眺めて過ごすなんて、当人以外からすると無駄・浪費・キチガイ沙汰(自戒の意味も込めて)、それが本好きだと思うのですけど、違うかな~?

実際、著者の本収集もたいしたことないです。あえて読む必要はないかと思いました。ついつい読破してしまってけどね。
【目次】
グレアム・グリーン蒐集
ロンドン古書界の変人たち
図書館も本屋もない町で
SFコレクションは質よりも量
君はセンスオブワンダーを持っているか
本の壁は世間の壁
映画館にいりびたり
ブックハンターの儲け話には裏がある
コレクションは身近なものから
富と力のある人間とつきあうには…
情事の終わり―愛書を売る
本屋の性夢
マッドマックスの国は祖国と呼べない
ハリウッド・セレブリティが求める本は?
パリはロマンティック
シェイクスピア書店、そして仲間
ある愛書狂の告白(amazonリンク)

関連ブログ
「呪のデュマ倶楽部」アルトゥーロ ペレス・レベルテ 集英社
ナインズ・ゲート デラックス版(1999年)ジョニー・デップ主演
「謎の蔵書票」ロス キング 早川書房
「書物の敵」ウィリアム ブレイズ 八坂書房
「古書店めぐりは夫婦で」ローレンス ゴールドストーン, ナンシー ゴールドストーン 早川書房
「古書街を歩く」紀田 順一郎  新潮社
「古書法楽」出久根 達郎 中公文庫
「関西赤貧古本道」山本 善行 新潮社
「本の国の王様」リチャード ブース 創元社
「世界古本探しの旅」朝日新聞社
「古本道場」角田 光代、岡崎 武志 ポプラ社
ラベル:SF 書評 古書
posted by alice-room at 19:54| 埼玉 ☁| Comment(2) | TrackBack(0) | 【書評 本】 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
私は、この本は読んだ記憶はないが、
パラパラとめくった記憶がある気がします。
その程度の認識。
買うほどの本じゃない、読むほどの本じゃないとその時の
私は思ったのでしょう。
目次を見るだけで、だいたい、どんな本がわかる気がします。
特に本書は一目でわかりましたwww
「実際、著者の本収集もたいしたことないです」
たしかにコアではないですね。
しかし、素人にはすごいという感覚なのでしょう。
バーキンのバック300万円みたいな・・・。
私も著者の話は正直、どうでもいいです。
温度差を感じました。
まあ、陳腐な話が多いのも、イーベイでの話があったりするのも
玄人向けではない、所詮は。
古書収集には奥が深いし、稀覯書を持っている人ほど、
コレクションを公開しません。
美術品では、個人蔵だけで暈されているものがありますよね。
それと同様に、稀覯書ほど、自ら、所有を誇示する人が多くないです。
車やバックや時計なら、見せびらかすことに重点が置かれますけど、
古書は、また、それとは違いますので・・・。
フランスには愛書家のクラブが今でも存在しますが、
相当、閉鎖的です。クラブというより秘密結社ですね。
古書収集家ほど、閉鎖的な趣味の人種はいないと思います。
収集するものがいくらでもあるもの、ある程度市場にあるならば、
そこまで閉鎖的ではないと思います。
しかし、古書は一点しかありません。たいていは、そうです。
自分以外は、みんなライバルです。
ライバルに、有益なことは何も言えませんので。
また、ライバルを増やすという、自分の首をしめるような
間抜けなこともしませんので。
Posted by 愛書家 at 2008年04月12日 06:10
>古書収集には奥が深いし、稀覯書を持っている人ほど、コレクションを公開しません。

そうなのかも知れませんね。未だにオークションで全く知られてなかった写本や秘蔵本が普通に出てくる場合があるようですし。

また、見せてもその凄さを理解してもらえない、自分の感動(自慢)を共感してもらえないのもかえって興醒めですから・・・。

分かっている人に限って、まさに『ライバル』でしょうし、う~ん、辛いものですね! もっともそれも含めて楽しめるぐらいじゃないといけないのかもしれません(笑顔)。
Posted by alice-room at 2008年04月13日 09:01
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