
Hours of Catherine of Cleves 獲得までの経緯
いろいろと苦労して購入したんですが(40年以上前の初版ですし)、その辺の経緯は上記をご覧下さい。やっと読了しました。
経緯のところで触れたのと一部重複しますが、本書「カトリーヌ・ド・クレーヴの時祷書」について。
全部で360頁中、160頁に写真のような彩色図版が入っていて右が図版で左が図版の内容説明という見開き対面構成になっています。15世紀の手彩色写本による時祷書を元に、簡潔で適切な解説と非常に美しい絵が印刷されています。初版は1966年で、その後数回版を重ねています。ハードカバーとペーパーバックがあり、革装丁版もあります。

具体的な内容について。
「時祷書」とは、キリスト教の平信徒などが日常のキリスト教の礼拝用に用いる絵入り聖書で、多くは貴族の女性用に作成され、豪華で貴重な貴金属をおしげもなく使い、一種の宝物としても扱われたもの。従って、本書でもたくさんのキリスト教的図像がこれでもかというぐらいに表現されています。

新約聖書が基本ですが、それのみに限定されること無く、旧約聖書や黄金伝説や外典由来の図像が頻出します。アトリビュートや黄金伝説などの知識もあればあるほど、面白いはず。

それに、中心に描かれる図案とそれを取り囲む枠及び帯状の枠内に描かれる図案との関連が面白い。旧約聖書と新約聖書を対比させた予型論やアナロジーなど見ていて飽きないし、絵を見てコメントを読んでいくだけで自然と中世のイコノグラフィー(図像学)が理解できるようになります。

勿論、何も知らなくても絵を見ているだけでも面白いのですが、その絵の説明を読んだ時、理解できるだけのものを持っていると、絵だけを見る時の何十倍も楽しめます。これ、絶対!!

例えば、プレッツ(あのプレッツね)とビスケットで囲まれたデザインとか、セバスティアンなどは、弓矢で囲まれている。
地獄へ通じる口なんか、ずいぶん斬新なデザインじゃないかなあ~。他には、ワイン絞り器に挟まれたイエス様が血を流して、それが絞り口にあるカリス(聖杯)に集まっている図もあります。これって凄くない? 確かに以前、中世彫刻でも同じ図案を見たことがあるけど、これはこれでかなりのインパクトがあります。

とにかく絵だけを見たのでは、気付かないことやよく分からないことが本書の説明を見ると、おおって驚かされることが多々有ったりする。実に、実に楽しめる時祷書です。

ホント、NYのモーガン・ライブラリーまで実物を見に行きたくなりますよ。前から知っていたらなあ~、チェッ!
キリスト教図像に関心のある方、美しい写本好きな方、これは絶対に間違いないと思うのでお薦めします。日本のamazonでも扱えばいいのに・・・。在庫あるんだからさ。
【図像に関する補足】
十字架降下、減らない食べ物マナ、エッサイの木、アダムとイブ、シバの女王などが、ここに載せた図版です。本書にはこんな感じの頁が160頁あります。
イエス様の血を聖杯に集めてる絵は経緯の記事の図版です。
The Hours of Catherine of Cleves(amazonリンク)
Hours of Catherine of Cleves(amazonリンク)
日本のamazonでは、登録がおかしい?
関連サイト
The Morgan Library & Museum
関連ブログ
Hours of Catherine of Cleves 獲得までの経緯
紹介している図版が違うので、こちらもどうぞ!
「美しき時祷書の世界」木島 俊介 中央公論社
黄金伝説 Golden Legend コロンビア百科事典による
送料込みで四千円ぐらいならお買い得だと思います。
仰るとおり、日本のamazonでも扱って欲しいものです。
もっとも僕が買っても読むのではなく、眺めるだけでしょうが。(苦笑)
この本、解説が英語ですが、右側の絵を説明している関係で、逆説的に絵を見ることで説明が理解できることが多々ありました。分からない単語は飛ばして読んでいたのですが、絵を見ると、その意味が自然と推測できたりするのです。ちょっと意外ですぅ~。
何気に英語学習の教材になるかも? あまり興味の持てない英語の教科書よりか、何十倍も分かり易く、楽しいテキストでした(笑顔)。
私の友人は時祷書を一ページづつ定期的に購入する事をやっていました。
このサイトを見ると変えないけれどワクワクします
http://www.skriptorium.at/catalog/index.php?cPath=1_38&osCsid=504556e7fe2ded45b2adfbd2a6313a7a
美しい時祷書は、もう眺めるだけで、いや持っているだけで満足してしまう宝物かもしれませんね。
>私の友人は時祷書を一ページづつ定期的に購入する事をやっていました。
毎回が待ち遠しくて溜まりませんね。きっと。この時祷書を買って以来、時祷書趣味に火がついてしまい、結局時祷書関係の本を更に2冊購入してしまいました。だって・・・だって・・・欲しくって・・・(自暴自棄?)。