2007年04月26日

「中国怪食紀行」小泉武夫 日本経済新聞社

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今の日本でいうなら、ゲテモノ喰いとか悪食(あくじき)とか呼ばれてしまうネズミやハチ、蛇、犬等々。何でも現地で普通に食べられているものには、チャレンジし、それを美味しいと心から思ってしまう著者の味覚に拍手! この人、本物のグルメだと思うなあ~。

著者が事前に余計な偏見を抱かずに、まずは現地の人と同じもの食べてみようとする姿勢が実にイイ! 食べてみなくては分からないものっていっぱいあるからね。食べたうえでの好き嫌いは、あって当たり前だけど、食べもしない人には一生何も知らないままで終わる人だと思う。それもその人それぞれの生き方ですけど。

私的にはグルメなんて人種は、食い意地の張った強欲の塊みたいなもんでどんなに美味しいもの食べて満腹で戻しそうでも、まだ食べたことのないものがあれば、箸を伸ばして無理して口に入れようとする、それぐらいの存在だと思っていたりします(個人的偏見)。

失礼ながら、著者ってそういう人だったりして・・・?そんなふうに誤解しかねないほど、この著者はどんな食べ物にでもTRYします。軟弱な私では、そこまでは食べないかなあ~と断念しそうなモノ(カブトムシとかセミ)でも、美味しそうに食べる健啖家ぶりには脱帽。いやあ~、マジ頭が下がりますよ、ホント。どこの土地に行っても、人々と溶け込める素敵な性格をされていそうです。まあ、旅行してても土地の料理が食べれない人ってまず、そこに溶け込めないからね。当たり前と言えば、当たり前ですけど。

しかもこの著者、ただ&ただ食べるだけのゲテモノレポーターにあらず。専門が醸造学や発酵学の先生で、その土地土地での食べ方やお酒の作り方などを学問的に説明がつくところは、きちんと説明してくれたりもする。先祖伝来のやり方で美味しく料理し、美味しいお酒を作ったりする人類の知恵の素晴らしさをできるだけたくさんの人に紹介しようとするのも素敵だし、また勉強になったりする。漫画の「美味しんぼ 」のように鼻につくほど、嫌らしくなく自然体の語り口調も好感が持てる。

なんか単なる酒好きで食道楽の怠け者(失礼!)ってな感じにさえ、思えてしまうのだが、おそらく気のいいおっちゃんなのだろう。大衆酒場で、陽気に珍味つついて旨い酒飲んでるおやじってカンジです。率直に言って、憧れます。いやあ~、私もいろんなもの食べてみたいって思う。火さえ通してあれば。

そんな人が、うちの故郷のうまいもんがあるから、これ食べてご覧よ!って出してくるかなり匂いのキツイ発酵食品の数々。そ~んな感じで、著者が中国で出会った不思議で怪奇、しかも美味しい珍味の数々を紹介しています。あまり食べたくないなあ~と引きそうなものから、あっ!それ是非食べてみたいというものまで。今までの食の常識に鉄槌を下し、崩壊させかねないパワーがあります。

ここで紹介されたようなものを、食べる食べないに関わらず、本書を読むと食べるということの意味を、全く違った感じで再認識させられるかもしれません。私は、この本面白いと思います。既存の枠に囚われない、強欲なグルメの方にもお薦めです。

写真が結構入っていて、文字だけでは伝わらない凄さ(グロさ?美味しさ?)を伝えてくれるのもまた一興(つ~か一驚?)かと。いやあ~、旨い酒と旨い肴があれば、人生は幸せでしょう♪(笑)
【目次】
赤い色が似合う国
犬を食す
涙に咽ぶ魚です
君知るや究極の蛇の味
鶏がとっても旨いから
草の子たちに成仏あれ
虫は胃のもの味なもの
永遠の熟鮓
茶の国は知恵深し
醸して変身
豚は家族の一員である
牛肉がいっぱい
蘇れ珍獣たち
悠久の蒸留器
食うことは豊かの象徴
傘を差して大をする
スッポンと宰相
ヤシガニの涙
名酒はラオチャイより出て胃袋に収まる
朝の一杯、夜の三回
焼鳥はごゆっくり
曲は音楽にあらず
愉快な職人達に幸あれ
中国怪食紀行―我が輩は「冒険する舌」である(amazonリンク)

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<「世界屠畜紀行」内澤旬子 解放出版社/a>
「悪魔のピクニック」タラス グレスコー 早川書房
posted by alice-room at 21:05| 埼玉 ☁| Comment(2) | TrackBack(1) | 【書評 未分類A】 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
こんばんは。
これ、面白かったですよね。
その後、この小泉教授の本を二冊ほど読みましたが、写真と文、話題のバランスといい、これが一番面白かったように思います。
食べ物の話なのに、(ほぼ)全く自分も食べたい!、と思わないところも不思議でした。笑
*トラバさせて頂きました。
Posted by つな at 2007年04月28日 00:34
つなさん、こんばんは。TB&コメント有り難うございました。そうですか、この本は小泉氏の著作として当りの方なんですね。初めて読んだ本でしたが、幸運でした(笑顔)。

>食べ物の話なのに、(ほぼ)全く自分も食べたい!、と思わないところも不思議でした。
あっ、なんか分かるような気がしますね(笑)。私の場合は、これぐらいならなんとかいけるかな?ってのも幾つかありましたが、実際、著者は冒険者以外の何者でもないですね。まるで・・・勇者・・・かも(笑)? いろんな意味で勉強になった本でした。
Posted by alice-room at 2007年04月29日 19:36
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「中国怪食紀行」/舌の冒険家、小泉教授、中国を喰らう
Excerpt: 小泉 武夫 「中国怪食紀行―我が輩は「冒険する舌」である 」 目次 まえがき 中国地図 【第1話】赤い色が似合う国 【第2話】犬を食す 【第3話】涙に咽ぶ魚です 【第..
Weblog: 日常&読んだ本log
Tracked: 2007-04-28 00:31