
「告白」で有名な聖人アウグスティヌスに宛てた愛人からの手紙という体裁を取った架空(?)の物語。作者は私が読むのを挫折している有名な「ソフィーの世界」の著者でもあり、ブエノスアイレスの古書店で偶然見つけたコーデックスをラテン語から翻訳したものということになっている。
また翻訳したものをバチカンに送ったが、そんなものは受け取っていないと言われているそうだ。全体として本の装丁も趣味がいいし、ストーリーもいかにもありえそうって感じの架空話であり、品のいい虚構に惹き付けられます。
徹底した極度の禁欲でも有名なアウグスティヌスの「告白」内の文章を引用しながら、彼が分かれたであろう相手の女性の立場から、決して知られることのなかった人間としての(男としての)アウグスティヌス像というのを提示します。
体裁はあくまでも一信者たる女性、兼かつての愛人(=正式に婚姻関係を結んでいなかったらしい)からの私信という形をとりながら、実に巧妙な文章でキリスト教が内在する『誘惑する存在としての』女性観を描き出します。
キリスト教の説く「愛」の本来の姿は?という問いかけも、何気にちょっと考えさせられます。キリスト教にまつわる論理矛盾(と著者が考える?or 人が考える?)をあざとくないように指摘してるのも知的好奇心を刺激します。
どちらかというと、女性の私信という体裁上、基本的に女性の方がより多く共感できる作品かもしれません。近頃、あまり見なくなったタイプの小説ですが、上品なのに毒がありますね。
私には、かなり面白かったです。ずいぶん前に図書館で読んだ気がしますが、今回安かったので改めて購入しました。この本を読むとアウグスティヌスの著作「神の国」や「告白」も是非、読みたくなってしまいます。逆にそれらの本を読んだことがある人なら、もっと興味深く読めるのでは?と思います。
なお、念の為に申し上げると、著者も訳者も建前上(形式上)、本当の作者は不明とする姿勢は崩していません。私は勿論、創作だと信じていますが、これが本物の写本なら、それこそ『ユダの福音書』や『マグダラのマリアの福音書』並みの話題になるでしょうね♪(笑顔)
そういえば、「イエスの墓」とかいかにも川口博の探検隊みたいな眉唾モンのあの話題はどうなったんでしょうか? あまりにもチャチでその後の海外の記事フォローしてないんだけれど・・・???
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