
著者はイギリスの美術関係(出版関係?)の仕事をされている方らしいのですが、在野の研究者という肩書きになっています。御本人も暇さえあれば、美術館に行って絵を見ているという人らしいのですが、西洋の人でもやっぱり絵を見るうえではいろいろと知らないといけない約束事(白百合は○○の象徴とかいう図像学的なアレね)で分からないことが多いのを痛感され、他の人の理解の為にもって感じで独力で頑張って作ったものらしいです。
ほらっ、出版社が企画立てて、各分野の専門家に分担させて作るのってよくあるけど、あの手のってあんまり好きじゃないんだよね。一応、調べるときには使うけど、共同作業だから、どうしても平板な説明に終始し、その人が感じているもの全てを書き込むような余裕がないでしょ。逆に言えば、全体としての統一感を出すためにも、個人が表面に出てはいけないんでしょうが、すっごくつまらないんだよね。なんでもそうですが、パッションは大切かと。
そういう意味でこの事典は、書かれた人の情熱がはっきり感じられるものになっています。しかもその情熱は、絵画を見るときにいかに初心者でも分かり易く、同時にそこに描かれた意味を深く理解していかに鑑賞を満喫するかを目的とする方向に向けられ、その情熱が成功していると思います。読んでて、あの絵の持ち物(アトリビュート)はこういう意味があるんだ~とか、後から気付かされることがとっても多いです。先日、行ったラトゥールのマグダラのマリアの持ち物なんて、典型ですね。ドクロと聖書と十字架、あと香油壺(これには諸説あるが、当時はマグダラのマリアと同定されていたから)。
絵画がお好きな方で図録の解説で満足できない方なら、見てみると楽しいです。図録にもアトリビュートのことは書かれていますが、正直言って説明不足。私のような人間にはもっと詳しい説明してくれないと知らないんだから~。といっても、学芸員さんに時々質問してみることもあるんですが、う~んあまり御存じない場合が多いしね。自分で調べないといけないですね。そんな時にも役立ちますよ。
もっとも購入しなくても図書館にあるんじゃないかな? 事典類は場所をとるし、高価なので私ももっぱら図書館派。近くに無い場合なら、泣く泣く購入しますけどね。買うとなかなか開かないもんでかえって。広辞苑もそうだしなあ~。
そうそう、この本の中でも黄金伝説の解説があったのでメモ。仏語からの英訳だったんだ。ラテン語からの訳と勘違いしてたかも?
ウォラギネ、ヤコブス・デ Jacobus de Voragine(1230年頃~1298年頃)
ドニミコ会修道士でジェノヴァの大司教を務めた、「黄金伝説 Legenda Aurea(1275年頃)の著者として知られる。
同書は聖人伝、聖母伝、その他教会の祝祭日にまつわる物語を集大成したもので、待降節(クリスマス前の4週間)に始まる教会歴の順を追って編纂されている。原著はラテン語で書かれ、1483年カクストンによって仏語版から英訳された。「黄金伝説」がキリスト教美術の図像表現に与えた影響はきわめて大きい。
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