2015年01月04日

「ラルース ビジュアル版 美術から見る中世のヨーロッパ」ジャニック デュラン 原書房

cyuseinobijytu.jpg

ルーブルの学芸員の方が書かれた本です。
ビジュアル版と書かれているように多くのカラー図版があって、解説されている内容が視覚的に確認できて分かり易いのが長所かと。

基本、概説書ですので突っ込んだ深い説明はないです。
そういう意味では読んでいて物足りなさを感じますね。本書を読んで新しい知見を得た、とかそういうことはありません。

ただ・・・、同時並行して読んでいた「フランス・ロマネスク」がモノクロで写真はそこそこあるものの、図像的な説明が多いのにそれを目で確認できず、説明を理解できなくて不満があった時に読んだので、そのタイミングにおいて、一部不満が解消され、本書の方が表面的な満足度がありました。

でも、本書で書かれていることってほとんど私にとっては既知の話で、目新しいものがなく、刺激に乏しいのも事実。図書館で借りてきて、最初、面白そうに思って、購入しようかとも思ったのですが、結局、購入を断念しましたもん。

もっとも時間がなくて、自分の一番関心のあるロマネスク以降、ゴシック部分を通しで読んだというせいもあるのかもしれません。彫刻と装飾写本の関連の説明やゴシック建築の国際伝播の説明等、押さえるべきところは押さえてあるのですが、『光の形而上学』とかその背景の思想にまでは至りません。

一回、目を通せば良いかと思います。
【目次】
民族大移動の時代
 ローマと蛮族
 古代の名残と蛮族化
 島嶼のキリスト教文化
カロリング・ルネサンス
 よみがえった古代
 カロリング美術の開花
 宮廷美術の限界
紀元千年前後
 帝国の伝統、オットー朝の美術
 初期ロマネスク美術
ロマネスク美術
 建築の手法と原則
 ロマネスクの諸派
 彫刻の統一性
 彫刻の多様性
 色彩と素材、古典主義
 色彩と素材、想像力
 ※「中世の西欧とビザンティン」
初期ゴシック美術
 サン・ドニのシュジェール
 ※「交差リブ」
 発展と抵抗
 ニコラ・ド・ヴェルダン
盛期ゴシック
 十三世紀のモニュメンタルな美術
 聖王ルイ治下のパリの美術
ゴシックの広がり
 ゴシックのヨーロッパ
 宮廷美術
 ※「ジャン・ビュセル」
 イタリアとゴシック
 ※「イタイア金工芸の発明」
 ジョットの時代
 ※「アヴィニョン」
国際ゴシック
 ※「クラウス・スリューテル」
 1400年前後の海外
 奢侈美術
 ※「中世のタピストリー」
中世の終わり
 末期ゴシックあるいはプレ・ルネサンス
 ※「西欧の大公」たち
ラルース ビジュアル版 美術から見る中世のヨーロッパ(amazonリンク)

ブログ内関連記事
西洋中世学入門」高山博、池上俊一 東京大学出版会
「ヨーロッパの中世美術」浅野和生 中央公論新社
「フランス中世美術の旅」黒江 光彦 新潮社
「中世の美術」アニー シェイヴァー・クランデル 岩波書店
「ゴシック美術」馬杉宗夫 八坂書房
「ゴシックの図像学」(上)エミール マール 国書刊行会
「ロマネスクの図像学」(上)エミール マール 国書刊行会
「ロマネスクの美術」馬杉 宗夫 八坂書房
posted by alice-room at 19:53| Comment(0) | TrackBack(0) | 【書評 美術】 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
コチラをクリックしてください

この記事へのトラックバック