外務省の元役人が書いた本である。私が経済学を教わっていた先生には経済企画庁からの出向者等もいたので別に経歴はどうでもいいのだが、内容はお粗末の一言。歴史的な出来事をただ単に年代順に箇条書きにしてだけのものでしかない。
スペインという国が、地域が、統一国家を築いていくうえでイメージとし、それを支えた「西ゴート王国」の歴史的存在を描こうとしたようだが、本書において全くその意図は達成されていない。少なくともその視点から、歴史的事実を再構成するとか、評価するといって記述がほとんどない。スペインに関心のある人に、スペイン理解の一助となれば・・・などと月並みな事を書いているが、この本を読むなら、アービングの「アルハンブラ物語」でも読んだ方がなんぼかマシ。NHKスペシャルのトレド関係の番組みるか、フラメンコの舞台でも見に行った方が良い。
また、イスラム教徒とキリスト教徒間の争い調停や、権力者による政権安定化の手段として制定された『法律』を採り上げてるのは良いだが、その内容をいくつか紹介しているだけではなんの意味もない。もう少し踏み込んでその法律の有する意義とその影響・効果についてもコメントできなかったのだろうか? 学部生の卒論に毛が生えた程度にも見えてしまう。
知り合いが本書を手にとっていたら、一言言いたい。読むのは時間とお金の無駄だよと。
【目次】西ゴート王国の遺産―近代スペイン成立への歴史(amazonリンク)
1 スペインの形成
2 古代のイベリア半島
3 イベリア半島でのカルタゴとローマの戦い
4 ローマ帝国の支配
5 西ゴート王国の成立
6 西ゴート王国の宗教会議
7 西ゴート王国の法律
8 イスラム勢力のイベリア半島侵入
9 キリスト教徒による国家統一
10 キリスト教王国における法律
11 カスティーリャにおける一般法の制定
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