2007年05月14日

「澁澤龍彦」河出書房新社

澁澤さんの死後、澁澤さんを偲んでゆかりのあった人々による追悼集の類(たぐい)。澁澤さんが亡くなった時に、幾つかこの手のものが出ているのは知っていたが、極力ダンディズムを渇望し、自らもそれたらんとしていた故人だったら、きっと嫌がったのではないかと思う。

実際、どうかは知らないが、私の内部ではそういう思いが強く、今まで極力この手のものは避けてきた。ただ、先日、澁澤さんが没後20年という展覧会を見て、自らの呪縛を解いて読んでみた。

作品からだけでは、知らなかった澁澤さんの姿がいくつも現れる。勿論、周囲の人による思いは、故人とその人との関係により、見方も評価も異なるのを前提としても、やっぱり驚きが大きかった。

と、同時に読むべきではなかったかなあ~という気がしないでもない。あくまでも一読者でしかない私だが、少なくともリアルタイムに氏が書かれていたものを読んでいた以上、作品以上のものを不要であったと思う。

確かに人物としての澁澤さんにも関心がないといえば、嘘になるが、やっぱり著者自身以外の文章から著者を推し量るのは美学に反する。端的に言えば、下世話で美しくない。

例えばチェークスピアの生涯に関心を持つのは、同時代人ではなく、後世の人々であるのと同様に、同時代人である氏を同じような観点から捉えるには、抵抗を覚える。『過去の人物』としての見方はしたくない!

そういう私には、読むべきではない本でした。人生に後悔などする愚か者ではない私としては、悔やむことはありませんし、知らなかったことを知れたという喜びもあります。でも、知らなかったことによる、勝手な自己満足の一部が確実に失われたのも事実でしょう。

それぞれの人の思い入れにもよるでしょうし、考え方にもよるでしょうが、私と近い考え方の人は、絶対に読むべきではないと思います。少なくとも同時代人ならば、読まない方がいいと私なら信じます。

なお、多彩な人物によるコメントは興味深いのも事実だと付け加えておきます。貴方次第ですが・・・。

参考までに多彩な人物の一部:
 巌谷國士、種村季弘、出口裕弘、埴輪雄高、石川淳、三島由紀夫、稲垣足穂、良行淳之介、四谷シモン、養老孟司、野中ユリ、唐十郎、寺山修司、中野美代子等々。
【目次】
Ⅰ家
  高輸に生まれる
  深谷のブッデンブローク家
  滝野川の少年時代
  鎌倉小町
  最後の家

Ⅱ讃
  澁澤龍彦讃
  花の魔術師
  澁澤龍彦氏のこと
  読書界を裏返した男
  昭和二十三年の澁澤龍彦
  夢の宇宙誌
  闇の中の電流
  銀鮫

Ⅲ論
  amour figurae
  月の王の末裔
  『洞窟の偶像』『東西不思議物語』
  『裸婦の中の裸婦』『澁澤龍彦考』書評
  異端の日本学の系譜
  上機嫌の思想
  よく似た男
  神と玩具
  球体のものがたり
  ランティエの余裕と孤独
  薬草園とサド

Ⅳ回想
  後ろ姿の澁澤龍彦
  サロン、庭園、書斎
  『裸婦の中の裸婦』あとがき
  一字の師、大度の友
  天使となった澁澤さんに
  オブジェと化した肉体
  むかし、むかし
  日時計の影のもとに
  「青春の日々」のこと
  澁澤龍彦メモリー
  澁澤龍彦のこと

Ⅴ旅
  中近東日記
  泥の王宮
  『滞欧日記』の真相

Ⅵ作品
  サディストの文学
  幸福より、快楽を

Ⅶ全集
澁澤龍彦(amazonリンク)

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「澁澤龍彦ー幻想美術館ー」展、埼玉県立近代美術館
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「神聖受胎」澁澤龍彦 現代思潮社
「図説 地獄絵を読む」澁澤龍彦、宮次男 河出書房
澁澤龍彦氏の書斎を紹介するサイト
ラベル:書評 澁澤龍彦
posted by alice-room at 21:52| 埼玉 ☁| Comment(2) | TrackBack(1) | 【書評 小説A】 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
alice-roomさん、こんばんは
この類の本は、片っ端から買ったので、目次を見て初めてどの本か分かりました。(苦笑)
確かに、知らない方が良かったものもありますが、僕は、基本的に資料として集めました。もっとも、メモもとらず、斜め読みしただけなので、内容はほとんど忘れています。(苦笑)
作家自身と作品とは、独立したものだということは理解しているのですが、どんな人物であったかということはやはり気になります。
ちなみにこのシリーズは、澁澤龍彦と泉鏡花と宮沢賢治を買いました。
過去記事をTBさせていただきましたので、よろしくお願いいたします。
Posted by lapis at 2007年05月15日 21:08
lapisさん、さすがですね、目次で本の特定ができるとは。似たようなタイトルが多くて、私混乱しそうでした。

私の場合、澁澤さん死後のものは資料として、手元に置いておきながら、読まずに死蔵したい気持ちだったのですが、手元にあると読んでしまいそうで、一生懸命避けてました。買ったら読んでしまいそうなんで、買うのも我慢してました。

今回、何故か図書館で見つけてしまい、読んでしまったのですが、どうやら、私の場合は澁澤さんを偶像のままで置いておきたかったようです。そういう人には、やはり向いていなかったみたいです。難しいものですね、読みたいけど、読みたくないというアンビバレンツな気持ちで今も一杯です。

もう後20年ぐらい(←気の長い話ですが)置いてから、我慢できなくなってつい、手にとってしまった。その状況まで待っていようかと思います(笑)。その時は、どんなふうに感じるのか、それも楽しみです。

TBどうも有り難うございました。
Posted by alice-room at 2007年05月15日 21:55
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Tracked: 2007-05-15 20:50