
先日読んだ「ルターの首引き猫」の本と多くの図版が重なります。また、解説も重複するところが多いです。基本的に両方が宗教改革時の印刷物の図版を扱っているので、当然のことなのですが、せっかくなので違いを述べてみます。
前者では、図版の数が絞られている反面、一つ一つの図版が非常に大きく、図版を介した内容の説明をしながら、宗教改革の中でその図版がどんな意図を持って製作され、どのような影響を与えていったのかを解説しています。
それに対して、本書では図版の数が多くなっている反面、小さな図版も多く、図版自体の説明も詳細にされているものと簡略なものに分かれます。特定の図版については、詳しい説明がされ、宗教改革における意味の解説もされているのですが、どちらかと言えば、宗教改革の説明の為に図版が使われているという感じで、前者の本とは構成が対照的であるように思います。
どちらか一冊ということならば、私は前者の分かり易さと内容を絞り込んだうえでピンポイントの解説の詳しさを強く押します。もっとも本書もそこそこ面白いので両方読んで読み比べると相乗効果もあり、一層理解が深まると思います。悪くないと思いますよ~。
なお、前者の第5章 「ヴィッテンベルクの鴬」というのが、実は本書の「ヴィッテンベルクの小夜啼鳥」と同一の図版を指しています。
そうそう、本書ではいかにもオイレンシュピーゲルを翻訳された藤代氏らしく、中世ドイツの民衆の習俗や慣習などに絡ませたコメントなどが多く、そういった視点からの解説も多いです。ご参考までに。
【目次】ヴィッテンベルクの小夜啼鳥―ザックス、デューラーと歩く宗教改革(amazonリンク)
ある男の旅から
宗教改革の発信地
ヴィッテンベルクの小夜啼鳥
謝肉祭劇を覗く
ザックスとデューラーの町―ニュルンベルク
古城ワルトブルク
四人の使徒
結び
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