
パリのセーヌ川沿いに立ち並ぶブッキニスト。
パリの光景としてはお馴染みのものだが、そのブッキニストがいきなり拉致られるところから、物語がスタートする。
軽い気持ちで購入した古書が高価な稀稿本だった・・・・というのは、まあ、世界中のどこでも古書マニアが夢に見る都市伝説ですが、そういったベタなところを物語は進んでいきます。
登場人物は必然性がないのに何故か元FBIで大使館の外交保安部長という、肩書きはまあ、おいといて友人がCIAとかそういうのも置いとくべきかな? まあ、誘拐されたブッキニストが知人でそれを探すというストーリーになります。
頭をひねったトリックとか、謎を鮮やかに解き明かすような名探偵などは出てきませんが、きわめてオーソドックスなごく普通の小説として物語は進んでいきます。
そして、お約束のイベントが次々と生じ、物語は順当な流れで解決(?)というかエンディングに向かっていきます。
これだけ聞くと、なんかとっても退屈でつまらない小説に聞こえてしまうかもしれませんが、奇をてらったところがない分、非常に正統派的で普通に楽しめる物語になっています。読んでると次が気になり、結局、一晩で読了しちゃいましたし。
【以後、ネタバレ含む未読者注意】
あとはヨーロッパの抱える問題意識を背景的知識として知っていれば、本書の内容についても違和感無く溶け込めるかと・・・。
イスラエルが戦後、未だにナチ協力者の徹底的追及と解明を進める一方、ヨーロッパだけではなく、バチカンやオーストラリア等戦勝国には戦後も政治の第一線に立ったり、社会的指導者層で活躍した人物が戦争中はダブルスパイやナチの協力者となっていたりした事実が時々、すっぱ抜かれて政変が起きたり、まだまだ戦後は完全に終わっていなかったりする。
たまに海外のニュースでも出てくるしね。ホットな話題だったりする。
以前のPOPEがヒトラーユーゲントかなんかだっけ?所属してたってので、騒がれていたりね。
そういうのを知っていたり、フランス他西欧諸国の旧・植民地からの移民とか直接、あちらに行くと実感したりする。サン・ドニなんて、アフリカのどっかの国かと思いましたよ。数年前にパリに行った時には。
話はそれましたが、古書にまつわる小説だったので手に取りましたが、まあ~印刷本だしね。
装飾写本とかでもないし、インキュナブラでもないしね。
古書という点では物足りないですが、小説としては暇つぶし程度にはなるかと。
お薦めの面白い本ではないですが、それなりに読めました。可もなく不可もなくかな?
古書店主 (ハヤカワ文庫NV)(amazonリンク)