
いつもながらの作風の入間氏の作品です。
分かっていて読む読者が悪いのですが、いつも通りと分かっていながら、読むと今更ながらに衝撃を受け、こういう作品が野放しってどうよ?って柄にも無く、本気で検閲した方がいいのでは?って思ってしまったりする。
やられたらやり返す、何倍にもして自分1人で自分1人の正義を貫き通す。
アメリカ映画なら、ランボーやシュワルツネッガーのように観ている人にカタルシスをもたらすのですが、著者の作品の場合は・・・というか特に本書の場合は、強烈な嫌悪感というか不快感、思いっきりテンション下げ下げのダウナー系に陥ることになった。
別に「みーまー」の時から、著者の作品は決して普通だったためしが無いのですが、オチ(?)を知れば、非常にシンプルで明快であり、普通ぽいのですが・・・・どう考えても、普通の人には思いつくことが出来ない、本来有り得ないことが何でもないように考えられ、説明され、物語として成立していってしまう・・・。
いやあ~それって、どう考えてもおかしいでしょう?
別に良心が~とか、倫理観が~とかいう次元の話ではないんです。人として最低限の枠っていうか、人が人である為の生き物が細胞から成り立っているとか、それぐらい根源的な自明なものがなんの抵抗も、心理的葛藤もなく、あっという間にその土台たる立ち位置から離脱して、全く別な異世界レベルのところで話が進んでいくんでついていくというか、理解するとかそういう事さえも考える、どこから認識する間もなく、それでいて何気ない日常の延長線上の突発事故的な扱いで話が進んでいく。
最初は認識できるレベルの人の人生について起りうるようなそれでも理不尽な事件から、物語は始まっていく。その理不尽さへの対応として、いささか別次元からの代償行為としての『復讐』劇として、更にストーリーは進んでいく。
この辺は、まあ、良識ある一般庶民である私他読者なら警察にお任せするところなのですが、これはほらっ、物語なので、過剰防衛でないが、過剰過ぎる行動が一連の因果の流れで起ってくるのも想定されるし、そこは好悪は別にして許容できなくはないのだけれど・・・・。
どこがどう間違ったものか、最初のボタンの掛け違いが最後まで引きずるように、なんかしっくりこないままノリで復讐は淡々と進められていく。過程の不可思議な点やご都合主義、説明不足はこの際、当然、大目にみる寛大さを読者に要求されるわけですが、それも大人たるもの甘んじて受け止めるわけです。
そうすれば、波風立たずに物語はテンポ良く進んでくれるし、『復讐』という古くて懐かしい陳腐だが、人の根源的な感情に訴えかける欲求も満たしてくれる、そう思う訳です読者は。
勿論、ひねくれ者の私でさえ、それぐらいはみんなと合わせるだけの分別ってものを持ち合わせ、それを遺憾なく発揮してあげていたわけです。
それなのに・・・。
ああ~それなのに・・・。
曲がりなりにも復讐によるカタルシスを得て、物語は終わるはずなのですが・・・・終わらなかったりする。
プロットとして悪いわけではないし、むしろ正統派であり、王道なのですが、そういった類の一切の常識的範疇のモノを超えて、単純にナニ、コレ? ナンナノ、コノハナシって?
呆然自失で、私は小説の読書中に惚けてしまうのですよ!
なんか知らない間に、人として大切なものというよりも、人が人していられれる最低限の尊厳を踏みにじちゃっていたりする。
それが自覚的な確信犯ならまだしも(犯人はそうなのだけれど)、読者たる私はそんな自覚持てないわけですよ。その辺、持たす機会も無しにいきなり、重い責任を持たされて、ビルの屋上の端に立たされているっていうか、既にそこから一歩踏み出して、バランスを失って、落ち始めた時に、その状況に気付くわけ。
とにかくもう手遅れだと分かった瞬間に、初めてそれがヤバイって気付きかける、それぐらい順序が違うの!!
次の瞬間には人としては終わってる、ようやくそれに気付くのだけれど、もう人がどうとかいう次元にはいないってのがポイントかな?
とにかく一言でいうと終わっていて、しかも嫌悪感というか、とにかくもう人として終わってる感しか残っていない、そんな感覚にはまってしまう。
出版社、担当者もこれを出版して金稼ぐって、人として最低じゃないかと思ってしまうが、それが言いがかりであると理性が批判するものの、関係者全否定さえもそれを許容できるほどの悪意(?)を抱かせる作品です。
しっかし、本当に読後感が悪いです。
人として、自分が最低野郎になった気がします。
本書を読んでいる人はみんな、将来的思想犯予備軍、あるいは反社会的予備軍として隔離か処刑した方がいいのではと半分冗談混じりで、半ば本気で新派の刑法を出すまでもなく、殺した方がいいのでは?
と真剣に考えそうになるぐらい、精神が病んでくる本です。
10代には読ませたくない本ですね。
たったひとつの、ねがい。 (メディアワークス文庫)(amazonリンク)